8月1日にUR都市機構と共同研究協定を締結して以降、建築史研究室(海老澤研究室)ではURの協力を受けながらスターハウスに関する調査を進めています(スターハウスについては8月8日の投稿を参照)。今回は10月25-26日に実施した関西調査と11月22日の名古屋調査について報告します。建築物は現実の場所に建つもの。百聞は一見にしかずというように、実物を見ることは建築史の研究においてとても重要です。今回も多くの発見がありました。
香里団地(大阪府枚方市、1958年入居開始、日本住宅公団)
スターハウスが22棟建設された大規模団地です(4棟現存)。訪問した10月25日午前はあいにくの雨模様でしたが、バスの車窓から高台にスターハウスが見えると、にわかに調査モードへと切り替わりました。高台に屹立するスターハウスの姿は、登録文化財になった東京の赤羽台団地以上に印象的です。住戸からの見晴らしもよく、住み心地はよさそうです。住棟の外観がモダンに改修され、歴史的な遺産の価値を高めようとしていることがわかります。
仁川団地(兵庫県宝塚市、1959年入居開始、日本住宅公団)
起伏のある土地に特徴的な配置計画がなされています。スターハウスはその中心に8棟まとめて建設されました。残念ながら取り壊しが予定されており、仮囲いが設けられています。配置計画とスターハウスの扱い方は香里団地よりもさらに独創的でした。斜面地の湾曲する道路を歩いていくと、高台に建つスターハウスの風景が観察者の移動にあわせて変化していくのがわかります。住宅公団草創期において、関西の団地計画は関東以上に野心的だったと言えそうです。
その他にも旧住宅公団の中百舌鳥団地(大阪府堺市)、金岡団地(大阪府堺市)、東長居団地(大阪市住吉区)、春日丘団地(大阪府羽曳野市)、さらに京都市営桃陵団地(京都市伏見区)を訪ねました。
11月22日の名古屋調査では、スターハウスが現存する3つの団地を訪ねました。名和団地(日本住宅公団の分譲住宅)、愛知県営菱野団地、名古屋市営島田団地おおね荘です。
名和団地(愛知県東海市、1964年竣工)
住宅公団が建設した「分譲」の団地の中で唯一スターハウスが残る例です。4棟のスターハウスが、弧を描く道路沿いに並んでいます。分譲住宅であることから、所有者によって大切に維持されてきた様子が見て取れました。名和団地のスターハウスは公団によって建設された最後の例とされます。いわば公団スターハウスの集大成であり、同時に分譲住宅としての特別仕様であったこともわかります。
次の目的地、愛知県営菱野団地(瀬戸市)に向かった時、雨が強くなりました。大阪の調査でも雨に降られ、どうやらメンバーの中に雨男がいるようです。名古屋を縦断し、瀬戸口駅から高台へと歩くと、巨大な団地が出現します。この団地では、スターハウスが板状住棟をつなぐヒンジのような形で用いられており、他にはない独特な住棟配置計画が確認できました。
巨大な菱野団地を歩きまわり、予定時刻を大幅に超過したため、最後の目的地、名古屋市営島田団地(名古屋市天白区)に着いたときは日暮れ間近でした。ここで確認したかったのは、増築されたスターハウスです。その姿はもはやスターハウスとは別物であり、ほのかに残る光の中、城塞のような威容を誇っていました。
建築史研究室では引き続き、スターハウスに関する資料の収集と調査・分析を進めていきます。