工学部 基礎教育研究センター

2 ブログの役割とは?—日誌と日記

前回の復習から始めると、前回は、ブログとは何かということを考えた。いや、考えたというよりは、自身の勉強の意味も含めて調べたと言った方が正確である。Wikipediaによると、ブログとはウェッブログの略であり、ウェッブ上のいろいろなサイトを閲覧した際の感想や意見を認(したた)めた、読書ノートのようなものであるとのことだった。読書ノートとは言っても、多くの場合はそれをウェッブ上に公開し、衆目にさらすわけであるから、「公開読書日記」のようなものと言った方が近いかもしれない。

ところで、ブログの「ログ」というのは、もともと英語で「航海日誌」を指し、これは航海士が毎日つける業務日誌のようなものである。日記と日誌とでは、ちょっと似ているが、かなり意味が違う。まず、日記というと、普通は個人が毎日の身近な出来事を書き留めておくものである。読者諸氏の中には、小学校のころ、夏休みの宿題として絵日記をつけた思い出のあるヒトも多いかもしれない。

日記はそれぞれの書き手の生活形態によってその内容はさまざまである。たとえば、趣味を生きがいにしているヒトは、「趣味の日記」のような内容についついなってしまうかもしれないし、友だちとのおしゃべりを生きがいにしているヒト(そういうヒトが仮に地球上に存在するとして)であれば、今日はどこの街に行って誰とおしゃべりをしたというような記録を毎日つけることになるのかもしれない。

有名な日記に「アンネの日記」がある。これは、オランダのアムステルダムに住んでいたアンネ・フランクというユダヤ人の少女が書いた日記で1942年6月12日から始まり、2年後の1944年8月1日まで及んでいる。もうひとつ、これは日記ではないが、「あしながおじさん」という小説がある。こちらは、ジュディーという少女が毎月書いた手紙という形態をとった小説である。

さて、つぎに、日誌である。日誌といえば、小学校から高校までの間、毎日日直に当たった生徒がつけた「学級日誌」というものがあったのを覚えているだろうか。こちらは、日記と違い、毎日書くことがだいたい決まっている。例えば、1時間目から6時間目までの授業の内容をそれぞれ1行程度にまとめる。感想欄もあることもあるが、そんなに書くスペースはない。それから、今日の掃除当番は誰であったかとか、その掃除の出来はどうであったかなどを日直がチェックして記録する。書き終わったら担任に持って行って見てもらうのである。

日誌とはこのようなもので、書くことが大体決まっているので、誰が書いても同じような内容になると期待できる。とくに、「業務日誌」と呼ばれるものはだいたいそうである。今日は何時から何時まで働いて、作業はどこまで進んだとかいうことを書く。これは、つまらないことのように見えるが、毎日つけることに意義がある。同じような単調な仕事を毎日しているように見えても、1週間、1か月と書きためていくと、その期間での進展の状況がわかるし、また、特殊な出来事が起こった日の日誌を読み返してみると、他の日にはなかったような異常なことが起こっていたことがわかったりする。業務日誌の良い所は、毎日書くことが決まっているので、習慣化すれば簡単に記録を残せるし、書きためていくとデータの比較ができることだろう。たとえば、お店であれば、お客さんが何人来たとか、売り上げの額がいくらだったというような決まりきったデータでも、長い間記録しておけば、それを表やグラフにしてみることができ、そこから季節変化などの統計的な傾向を読み取ることができる。夏休みの絵日記でも、天気などの毎日必ず書くようになっている欄は日誌の機能に近い。

さて、日本語でいうところの日記と日誌には、このような違いがある。ブログの「ログ」の意味は日記よりは日誌に近いと思われる。つまり、毎日だいたいのフォーマットが決まっていて、何もない原稿用紙に書くというよりは、記入欄を埋めていく感じに近い。。。はずである(少なくともブログということばの語源からはそれが本来の形であると思われる)が、実際はどうだろうか。個人でアミーバなどの上に構築されたブログシステムを利用してブログをやっているヒトの中には、日記のような記事ばかり書いているヒトもいる。そういうヒトの場合、内容もまちまちで、ある日は職場であった出来事を書いたかと思うと、その翌日には家庭の中で起こったことを書いたり、あるいはニュースで聞いたことを書いたりしていく。また、仕事用のブログとプライベートのブログを持ち、使い分けているヒトもいるようだ。たとえば、芸能人などでは、一方のブログは「オフィシャルサイト」と称して、仕事上の業務の進展状況しか書かない。どこでライブをやるとか、DVDが発売されますとか、そういうことを公式に発表する場である。その一方で、プライベートのブログも持ち、そちらではペットの話とか、取りとめのない思い出話とか、昔の深夜放送のパーソナリティーが言いそうなことを書く。あるいは、中には本当に私的な、家族どうしの連絡にブログを使ってしまっている(のではないかと思われる)ヒトもいる。

このように、ブログはその名前からして、本来は日誌的なものであったはずだが、次第に「公開日記」的な使い方をするヒトが増えてきたと言えそうである。いずれにしても、最近は技術が進歩して、誰でも気軽に(html言語を知らなくても)ブログを開設できるようになった。

3月の東日本大震災(正確には、2011年3月11日)の直後、安否確認をどのようにして行うかが実は非常に骨の折れる重要な案件であった。しかし、ブログをやっているヒトについては、そのヒトのブログが更新されていることによって、生きていることが確認できたというケースが多かったと聞く。まあ、書いている本人は安否確認のためにブログをやっているという意識はないのでしょうがね。

といわけで、今回は、前回に引き続いて、またまたブログについて考えた。ブログには、大きく分けて、本来の日誌的なブログと、そこから派生して生まれた日記的なブログがあるというのが、今回の記事の一応の結論である。

(この項終わり)

IPrA(国際語用論学会)

英語にも方言はありますか?(1)

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