*この記事は小川真人基礎教育教授が執筆しました。
今年(2019年)は、ドイツの芸術大学「バウハウス」(BAUHAUS)がワイマールに創設されて100年の記念の年にあたり、日本やドイツはじめ各地で記念の催しが開かれています。「バウハウス」は建築、デザイン、工芸そして写真等の各領域で大きな影響を及ぼした学校で、本学の教育研究活動とも浅からぬ関係にあります。この100周年の9月にドイツへ出張する機会があり、これをとらえてバウハウスの所縁の地であるワイマールとデッサウを訪ねました。
ワイマールの初代バウハウス校は100年前の1919年に、アーツアンドクラフツ運動やアールヌーヴォーなどの装飾芸術運動を背景にするドイツ工作連盟とのつながりから創設されました。現在もワイマールの校舎は芸術大学として活動中です(図版1)。ドイツでは9月が新学年開始なので、通りをいく若者の表情もこころなしかフレッシュでした。
その後バウハウス校は、1926年にデッサウへ移転しますが、初代校長だったワルター・グロピウスの設計によって「バウハウス・デッサウ校舎」が設立されます(図版2)。モダニズム建築の代表例として著名なこの校舎建築は、講堂、教室、研究室、学食などがバランスよく、学び舎に集う人々にとって使い勝手よいように配慮されていることように感じられました。
また先生たちの住居として建てられた住宅(マイスターハウス)は実験住宅的試みとして教育研究的実践の一環でもありました(図版3)。一部は内部に入ることができ、リビングや書斎、キッチンなどの様子を実見することができました。またデッサウ校舎の周囲の環境との関係も興味惹かれるところがありました。デッサウはベルリン郊外のライプツィヒ市から各駅停車でさらに1時間以上という小さな地方都市で、昔ながらのドイツの町なのですが、その町はずれにバリバリのモダニズム建築を誇るバウハウス校が出現したのには、当時さぞ人々を驚かせたことでしょう。このマイスターハウスも、周囲の松林の向こうに白いキューブのモダニズム住宅の外観で目に飛び込んできました。こういった周囲の環境と建築との取り合わせは実際に現地を訪れてみないと実感できないところで、いい経験をしたと思います。
デッサウでは100周年を記念して、新しいバウハウスの美術館「バウハウス・ミュージアウム・デッサウ」が新規オープンし、大規模な回顧展が開かれていました(図版4)。モンブランの万年筆インクを流したような青黒いガラスボックス的建築外観とバウハウス製品を組み合わせて設置しモダニズム生活空間を再現したような内部展示の様子の双方でとても興味深いものでした。
バウハウスは授業などでも話をきく機会があると思いますが、何かピンときたらさらに自分なりに調べてみると面白いですから、おすすめです。