工学部 基礎教育研究センター

先生の本が出ました!『認知言語学論考NO.10』(吉川正人先生)

吉川正人先生の論文スキーマの計算理論を求めて ─漸進する統語発達過程の記述問題とその解法─掲載された本が出ました。『認知言語学論考NO.10』(ひつじ書房)です。
みなさんにはまだ少し難しい本かもしれませんので、吉川先生よりわかりやすく説明をしていただきました。興味が出たら、是非本を手にとってみてください。
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吉川先生より

みなさんが物心ついたころには「自然に」日本語が使えるようになっていたのと同じように、英語圏のこどもも、5歳頃までに英語が「自然に」使えるようになります。何語であっても、いわゆる「母語」と呼ばれる、生まれてから周囲の人たちが生活の一部として使用していた言語は、このように「自然に」「いつの間に」習得されます。

では、こうして「いつの間に」習得される「言語」とは、いったいどういうものなのでしょうか? これに答えるのは、実は簡単なことではないのです。ある言語を知っている、習得しているということは、単にその言語の単語を知っているということだけではありません。一言でいえば、その言語の「文法」を知っている必要があります。しかし、「文法」とは、もしくは、「文法を知っている」とは、どういうことでしょうか。

ちょっと見方を変えてみます。1歳の子どもが、”Give me some.” と言ったとします。英文法の知識のある人は、「これは give という動詞を使っていて、give は SVOO の第4文型で二つ目的語を取るから、me と some が目的語だ。そして、動詞の原形で始まっているので、命令文だ。」などと、この発話を「分析」することができるでしょう。しかし、では、この子どもは、そんな複雑な知識を持っているでしょうか?

答えは限りなく No に近い、と言えます。恐らく真実は、この子は “Give me some.” という表現が、ひとかたまりで「相手 (基本的には母親) に何かを要求するのに使える表現」だ、というくらいの知識しかないのだろうと思われます。

また、同じ子供が2歳になって、また “Give me some.” と言ったとします。この時、この子の知識は、1歳の時と同じだと言えるでしょうか。これも、限りなく答えは No に近いと言えます。2歳くらいになると、幼児はある種の単語を使って、生産的に表現を作り出せるようになります。おそらくこの子は、”Give me one.” や “Give me more.” など、”Give me ____.” という「パターン」を使いこなせるようになっているでしょう。とすると、この子の”Give me some.”という発話は、”Give me ____.” (「____ ちょうだい。」) というパターンの一例として発されたのだ、と分析することができます。

さらに発達が進めば、先ほど例に挙げたようなもっと複雑で抽象的な知識を操れるようになりますが、それは3歳の誕生日を過ぎるくらいの頃になります。このように考えると、一言に「文法の知識」と言っても、それは、習得の過程で「刻一刻と移り変わっていく」ものだ、と言えます。しかも、ある時点で幼児がどのような文法知識を持っているか、ということを考えるには、その幼児が普段どういうことばを発しているか、ということを観察しない限り、分からない、ということも言えます。

前置きが長くなりましたが、この論文では、こういった問題意識の元で、幼児の文法知識を本人の実際に発した発話から「推定」し、それが成長に従ってどのように変化するのか、ということを検証しています。実際の分析には多少複雑な計算を用いているので、ここでは詳細は省略しますが、結論としては、文法知識の発達とは、上に見たようなパターンを、別の様々なパターンと組み合わせることができるようになることだ、という見解が得られました。

Intercultural Communication Studies

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