例年であれば、6月頃からオープンキャンパスが開催されいますが、今年度は、6月に開催予定であったオープンキャンパスは中止です。しかし、いろいろな形でオープンキャンパスに代わるものを準備しております。
先日学内で撮影が行われ、無機材料化学研究室でも撮影が行われました。本研究室にあるラマン分光光度計およびその周辺が映りました。どのような作品に仕上がるのか楽しみです。
ラマン分光光度計とは、化学・材料分野で用いられる分析装置の1つです。本研究室にある装置の外観はこんな感じです。
隣のパソコンで操作します。中に顕微鏡があり、測定サンプルは顕微鏡観察と同じようにセットします。その後、扉を閉めて、レーザー光をサンプルに照射し、発生したラマン散乱光というものを分析します。すると、物質の構造や成分などに関する情報を得ることができるのです。データベースと比較すれば、未知物質(正体のわからない物質)を鑑定することもできます。固体・液体・気体のいずれもOKです。測定の際は、サンプルをそのままの形(非破壊)で測定できます。つまり、サンプルを粉々にしたり、すりつぶしたりする必要がないのです。とても便利な装置です。
せっかくなので、ダイヤモンドと黒鉛とシャーペンの芯(HB)を測定してみました。いずれも炭素(元素記号:C)を成分とする物質です。その結果が下図です。これをラマンスペクトルといいます。スペクトルの形、ピーク位置の違いが一目瞭然だと思います。つまり、これらは炭素元素を主成分としていても構造が違うのです! シャー芯と黒鉛は類似構造(同じ位置にピークがある)。シャー芯は黒鉛粉末をノリ的なもので固めたものです。
このように、炭素系材料ではラマン分光光度計が大活躍します。よって、炭素材料を研究する無機材料化学研究室に設置されています。
また、ラマン分光光度計さえあれば、お手元のダイヤモンド(と信じているもの)が本物か、キュービックジルコニアか、ただのガラスか、簡単に調べることができます。試しにやってみました。
3つのサンプルを測定しました。(a)ダイヤモンドの原石として購入したもの(下の写真の右)、(b) キュービックジルコニアのルース(左)。キュービックジルコニアはダイヤモンドの模造品として使われます。化学的には二酸化ジルコニウム(化学式:ZrO2)です。
さらに、(c)カット前のキュービックジルコニア。。。だと思うのですが、ラベルがはがれてしまって分からなくなってしまったもの。
結果はこちら。(a)はれっきとしたダイヤモンドでした。(b)のキュービックジルコニアは見た目はダイヤモンドに似ていても、ラマンスペクトルは全く違います! また、(b)と(c)のスペクトルが似ているので、(c)の不明石はやっぱりキュービックジルコニアでしょう。
ちなみに、本装置は文部科学省の私立大学等改革総合支援事業により導入されたものです。教育および研究に大活躍しています。