東京工芸大学は、文部科学省の平成 28 年度「私立大学ブランディング事業」において、『「色」で明日を創る・未来を学ぶ・世界を繋ぐ KOUGEI カラーサイエンス&アート』というテーマで選定されています。これに関連して、東京工芸大学では、毎年、教員から「色」をテーマとした研究課題を募集し、助成を行っています。
そこで、この場を借りて、化学・材料コースの教員が代表者となり実施されている(実施された)研究テーマについて、順番に紹介します。今回は第3回目として、比江島俊浩教授の研究を紹介します。研究テーマ名は「生体高分子のゲル化がもたらす構造色とフォトメカニカル効果への応用」です。
以下に、比江島先生ご本人に解説を頂きました。どうぞ。
私たち日本人は、古の時代から自然の素材を巧みな伝統技法を用いて精錬し、何層にも紡ぎ上げることによって、神秘的な光彩を放つ芸術作成を作り上げてきました。玉虫厨子や曜変天目茶碗(いずれも国宝)がそのよい例でしょう。タマムシの翅や曜変天目茶碗には、色素も顔料も染料も含まれていません。これらの芸術作品の光彩は、昆虫のたんぱく質や釉薬(黒釉)の薄い層が何層にも積み重ねられた時に生じる光の干渉色(構造色)といわれています。
私たちは、ポリグルタミン酸(納豆のネバネバ)に内在する液晶秩序(色彩空間)を利用して超高速・高感度特性を有するバイオプラスチック(フォトメカニカル材料)の研究を進めてきました。下図は光線のベクトルに対して正負双方向に屈曲性を示すことを世界に先駆けて見出したときの写真です。
写真1 化学的な性質の異なる架橋剤を使って調整したポリグルタメート液晶ゲルが光に対して正負双方向に屈曲性を示したデジタル写真
本研究は平成29-30年度に実施したテーマです。現在、比江島教授は、今年度新たに採用された「社会インフラの維持管理に貢献する構造色の新規開拓とその応用」というテーマの研究も進めております。
第1回目の「黒鉛層間化合物の色標本の作製-色の分析とその活用-」はこちら。
第2回目の「金属ナノ構造電極を用いたエレクトロクロミック表示の耐久性向上」はこちら。