建築史研究室・海老澤模奈人教授がドイツ近代建築に関する数年来の研究成果をまとめた書籍『ジードルンクー住宅団地と近代建築家』を出版しました。
2つの世界大戦の間に位置する民主主義国家ヴァイマール共和国(1919-33)において建築家たちが取り組んだ「ジードルンク=住宅団地」の計画とその継承をテーマとしています。
ヴァイマール時代ドイツはバウハウスに代表されるように建築の表現が大きく変わった革新的な時代です。この本ではジードルンク建設にかかわった建築家たちの活動を幅広く取り上げ、今まで日本では語られなかった近代建築史の一面を提示しています。同時に建設後1世紀近くを経た住宅団地の現状を調査することで、モダニズムの建築の現代的意義を考えた建築保存・文化財保護の書としての側面ももちます。
ヴァイマール時代の建築家たちは「光、空気、太陽」のスローガンを掲げ、経済的かつ健康的な住居の建設を進めました。その試みはコロナ禍で住居や生活のあり方が問われている現在においてこそ、参照する価値のあるものと考えます。
重厚な研究書ですが、写真や図版が多数掲載された実用的な書ともなっています。ぜひご覧ください。
海老澤模奈人『ジードルンク―住宅団地と近代建築家』鹿島出版会、2020年8月
<目次>
序章 ジードルンクとは何か
第1章 最小住居への道程:エルンスト・マイのフランクフルトのジードルンク・プラウンハイム
第2章 水平連続窓と機能性:ヴァルター・グロピウスのジードルンク・デッサウ=テルテン
第3章 平行配置型住棟と住居の効率性の追求:オットー・ヘスラーのツェレのジードルンク・ブルームレーガー・フェルト
第4章 住戸平面研究の実践:アレクサンダー・クラインの大ジードルンク・バート・デュレンベルク
第5章 住棟配置と煉瓦壁に見る地域性:ハンブルクのヤレシュタット
第6章 住宅建設の象徴性と合理性のはざまで:フーベルト・リッターのライプツィヒのジードルンク・ルントリンク
第7章 受け継がれる居住空間:ブルーノ・タウトの大ジードルンク・ブリッツ