基礎教育准教授の牟田淳です。
今回のおススメは「パワーズ・オブ・テン」と呼ばれる科学映像です。
映像作品 パワーズ・オブ・テン
以下のDVDの1及び2番目に収録
EAMES FILMS:チャールズ&レイ・イームズの映像世界
http://www.amazon.co.jp/dp/B00005MIG1/
監督: チャールズ&レイ・イームズ
一番近いお星さまはどれくらい遠くにあるの?
私たちが普段生活している身の回りの景色は、この世界のほんの一部分にしか過ぎません。私たちが見る景色の大きさを変えていったとき、例えばどれくらいの大きさで一番近い星(恒星)が現れるのでしょう?つまり、太陽のお隣の、一番近い星はどれくらい地球から離れているのでしょう?
手始めとして身近な例から考えてみましょう。工芸大の厚木キャンパスから10kmの半径の円の中には厚木市がほぼ収まります、100kmの半径の円の中には神奈川、東京はもちろん静岡や千葉の一部が入ります。1000kmの半径の円の中には北海道から九州の大半が入ります。1万kmの半径の円の中には地球が完全に納まります(地球の直径約1万3千km)。しかしながらまだまだ太陽のおとなりの星は現れません。
こんな風に見る景色の大きさを10倍ずつ連続的に変えていくとどんな世界が現れるかを映像化した作品がパワーズ・オブ・テンと呼ばれる作品です(ただし、円ではなく正方形で説明しています。また、地上の風景はアメリカです)。この作品は、私たちが普段見ている景色はこの世界のごく一部で、私たちが生きている世界は大変スケールが大きい世界であることを教えてくれます。
地球から一番近い、工芸大厚木キャンパスから約40兆kmにある
アルファ・ケンタウリ(一番上の一番明るい星)。南十字星(下)のそばにある。
先ほどの円の話を続けましょう。10万kmの半径の円を越えて100万kmの円の中になると地球を回る月の軌道が収まります(半径38万km)。そして一番近いお星様は写真にある南十字星のすぐそばにあるアルファ・ケンタウリ(ケンタウルス座のアルファ星)と呼ばれる星で、厚木キャンパスから半径約40兆kmの円上あたりにあります。想像を絶する遠さですね。
パワーズ・オブ・テンではこのように大きさを10倍ずつ変えて、およそ10の24乗mの世界までを映像で眺めます。さらにその後、ミクロな世界も旅をします。大きさを10分の1倍ずつ変えて、原子、原子核、素粒子までの旅をするのです。
デザイナーが科学映像の世界でも有名に!
こんな風にいうと、この映像は理系の先生が作ったと思うかも知れません。ところがこの作品はチャールズ&レイ・イームズ夫妻という大変著名なデザイナーが監督したのです。デザイナーとして有名な人が一見すると分野が全く異なる科学映像の世界にも関わり、しかも科学映像の分野で名を残す歴史的な作品である「パワーズ・オブ・テン」を監督したのです。すごいですね。芸術学部の学生さんもがんばってください。
もしも太陽が1cmのビー玉だったら?
さて、ここで一番近いお星様は40兆kmと言われても想像できないという人もいるかもしれません。そこで、こんなたとえ話をしましょう。「もしも太陽が1cmのビー玉だったら?」としてみるのです。
するとわたしたちの地球は、太陽ビー玉から1m離れたところを回る0.1mmの砂粒です。最果ての惑星、海王星は太陽ビー玉から30mほど離れたところを回る砂粒です。太陽ビー玉が東京駅にあるとすると、一番近い星、アルファ・ケンタウリ(ケンタウルス座のアルファ星)は半径300kmの円上あたり、例えば仙台あたりにある光るビー玉です。夏に良く見えるおりひめ星は半径1700kmの円上あたり、例えば宮古島と沖縄本島の間あたりにある光るビー玉です。こんなたとえ話を考えると、想像しやすくなりますね。