芸術学部 基礎教育

リレー連載「大阪中之島美術館と『岡本太郎』展」

*この記事は相澤久徳基礎教育教授が執筆しました。

 社会全体が少し落ち着きを取り戻し、行動制限が緩和され、学生の皆さんも様々な活動に積極的に取り組めるようになったのではないでしょうか。基礎教育ブログ、10月担当の相澤です。今回、休みを利用して最近大阪に新しくできた「大阪中之島美術館」に行き、展覧会を観てきました。大阪中之島美術館では、近現代の作品を扱い、「連携すること」をコンセプトに、大学などの研究機関、多様な目的をもつ企業や団体、そして同じゴールをめざす近隣や国内外の美術館や博物館と手を携え、多角的なリサーチプロジェクトを推進しているということ。

 美術館に着いてまず大きく目を引くのが、黒いキューブ型をした外観です。周りの建物とは異質な感じを受け、それ自体が目を引く美術館の外観。大きさと合わせその雰囲気に圧倒される、今までの美術館とは大きく異なった印象です。

 

 建物の内部空間も、中央に大きく開かれた吹き抜けがあり、階段やエスカレーターなど空間を大きく使ったダイナミックな配置になっており、展覧会を見る前にも建物内の空間構成を楽しめる作りになっています。また、エントランスのある階から展覧会場に向かうエスカレーターはとても長く、作品の展示空間に向かう期待感をあおるような印象的なアプローチになっている美術館でした。興味のある人は、大阪で行われる企画展の展示に合わせて、足を延ばしてみるのもいいのではないかと思います。

 美術館で行われていた展覧会は、「岡本太郎」展で、初期の作品から晩年の立体作品まで、ジャンルを問わず作品と向き合った作家の様々な作品で構成され、作家がキャンパスや立体作品に向かう気持ちや考え方、作品の中に感じる筆致の息づかいや勢い、質感や手触り等、間近に感じることができました。驚いたことに岡本太郎は作品のほとんどを販売せず、川崎市にあるアトリエ(現、岡本太郎美術館)に保管されていたということで、一度展覧会に出品した絵画作品の上に、加筆をすることで作品に対してのイメージや、印象が大きく変わる作品にしてしまうなど、時間の流れと共に作家の作品に対しての考え方やイメージの変化が感じられる展示など、キャンパスの中での動きが観られるような展示もあります。常に新たな表現に向け創作活動を続ける姿は、作家活動としてとても興味のある展覧会でした。

 誰もが知っている大阪万博でお馴染みの「太陽の塔」の制作者であり、最近では構造自体の老朽化から解体するという話も出たが、万博公園のシンボルとして修復、保存され、現在は公開されています。普段はなかなか見ることのない「太陽の塔」内部の「生命の樹 全景模型」の展示もありました。

 今回の展覧会では、最近発見されたヨーロッパに留学していたときの作品と推定される3点が展示されています。留学当時の作品は、第二次世界大戦の戦火のために、1点も残されていないとされていましたが、偶然、見つかったものです。また、メキシコシティー郊外で2003年に発見され、現在は渋谷駅のシンボルとしてコンコースに展示されている作品の修復作業ビデオ上映。大きな作品のために、バラバラに割られ、現在の様子からは想像もできない、パズルあわせのような修復作業風景など、興味深い物でした。

 「芸術は爆発だ!」といった言葉や、「職業は人間である。」など、数々の印象的な言葉から、日本中に話題を呼んだ岡本太郎ですが、当時の作家に大きな影響を与えた作品を見ていく中で、私がお世話になった金属造形作家の(故)原武典先生が生前、「私が影響を受けた、一番好きな作家だ。」とおっしゃっていたことなど、展覧会を見ている中で思い出し、なぜかとても懐かしい気持ちで展覧会場を後にしました。

 学生の皆さんには、同時代を生きた作家としての印象はないかもしれませんが、今でも生き生きと感じられる作品の中に、岡本太郎という作家の生命力や、作品に対しての思いや考え方が伝わってくるかもしれません。

 「岡本太郎」展の巡回展が、10月18日より東京都美術館で開催されています。機会があったら、作家としてとても人間的で魅力があり、感性や思いの伝わる作品を見に行ってはいかがでしょうか。

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