芸術学部 基礎教育

あつぎ協働大学「おとぎ話から時代の価値観を探る」

基礎教育教授の鈴木万里です。

6月18日(土)10時~12時に、あつぎ協働大学「現代社会発展の鍵を探る―おとぎ話から経済まで―」の第4回として、「おとぎ話から時代の価値観を探る」というテーマでお話しました。

選択科目「ジェンダーとアート」の第4回目で毎年お話している内容を「時代の価値観の変化」という視点でアレンジしました。おとぎ話は口承で伝承されてきたため、その時代の価値観に合わせて変化・発展を遂げてきました。さまざまな時期に文字化されており、その時代のメンタリティーを知る手掛かりになります。また、おとぎ話は人々が幼い頃から繰り返し聴くことによって内面化され、成長の過程で自己を投影する人生モデルとしても機能します。個人のメンタリティーにも重要な役割を果たすのです。

おとぎ話「赤ずきん」は数多くのリメイク版が残されていますが、代表的なもの3作を比較検討しました。中世ヨーロッパで伝えられてきた原話を復元した「祖母の話」、ペローの「赤ずきんちゃん」(1697年)、グリム兄弟の「赤帽子ちゃん」(1812年)です。この3つの話は結末がまったく異なります。原話では女の子が知恵で狼を出し抜いて逃げることに成功します。ペローでは赤ずきんが狼に食べられて終わります。グリムでは赤帽子とお祖母さんはいったん狼に呑み込まれるものの、猟師に助けられます。つまり、ペローでは赤ずきんに非があるとされ、グリムでは狼が悪者です。原話は知恵比べの話です。このような結末の変化は何を意味しているのかを探りました。

また、挙手で確認したところ、21世紀を生きる受講者も9割近くがグリムを聞いて育っていることがわかりました。これは本学の学生も同じです。すなわち、現代は200年前のグリムの価値観の延長線上にあるということがわかります。それは、「武器をもった強い男性が問題を解決する」というメッセージを含んでいます。植民地主義の象徴ともいうべきこの価値観は、軍備増強に歯止めがかからない現代の国際社会にも通じるものがあるのかもしれません。私たちは今一度、自分の知恵で困難を乗り切る中世のたくましさを取り戻すべきなのではないでしょうか。

最後に20分ほど質疑応答の時間をとったところ、多くのご意見、ご質問を頂きました。知的好奇心の高い市民が近隣に数多くいらっしゃることに励まされた1日でした。

あつぎ協働大学「「現代社会の発展と英語-グローバル時代の英語力」

リレー連載6月号:「オーロラを見る旅」

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