東京では、先週の月曜日(1月22日)に雪が降った。朝、1時間目の授業が終わるころから降り始め、キャンパスは空から降ってくる白いもので覆われた。
昼ごろに授業を終わって新宿に向かったのだが、午後も雪は勢いよく降り続け、道路に積もっていった。こうなると東京という都市は脆弱である。午後5時には、もう帰ったほうがよいと主催者側からアナウンスがあり、帰路に着いたのだが、もうそのときには新宿の駅のホームは帰宅しようとする乗客であふれ、いつもは空いているはずの各駅の車両も人でいっぱいであった。その夜のニュースによると、渋谷駅は入場制限をしたそうである。わたしが乗っていた列車も新百合ヶ丘駅のポイントが雪で動かなくなり、しばらく足止めされた。
たまにしか降らない雪に備えて、線路のポイントが凍結しないような装置をつけることが合理的なのかどうかの判断はさておいて、自動車は雪が降っても走る。問題はその翌日である。降った雪が夜の間に凍ると、車で道路を走ることは危険になる。こうなるといろいろな仕事が中止となり、スーパーの棚からは商品が消えて隙間だらけになる。
車だけでなく、人間も凍った雪の上での転倒には気をつけなければならない。とくに、老人の場合は平常でさえ転びやすく、なおさら注意をしなければならない。老人の場合、一度転んで骨折すると若いときと違って直りにくく、運悪く寝たきりになると、罹らなくてもよいほかの病気を併発して、命の危険にも結びつきやすいという。
話は変わって、1月末から2月にかけて、大学では期末試験のシーズンである。高校生よりも一足先に春休みになる。
ところで、この期末試験のシーズンも老人、とくに女性の老人にとってはリスクが高まる時期であるという統計結果がある。すなわち、大学生の祖母がお亡くなりになる日付けを調べたところ、大学における中間試験、期末試験の期間に集中して亡くなる確率が増えるというのである。統計は、「大学授業の心得—数学の教え方をとおして」という有名な本に載っている。著者はアメリカの数学者 S. G. クランツ(Steven G. Krantz, 1998)で、ある研究者が所属している大学の事務に集まるデータを集計して調べたところ、年間を通して在学生の祖母の死亡率がもっとも高まるのが、大学の学事日程における中間、期末試験の時期と見事に一致していたということである。
なぜ、大学の学事日程と年配女性の死亡率とのあいだにこのような相関があるのかはわかっていない。しかも、学生の両親や祖父ではなく、祖母についてだけ、このような現象が見られるということである。もし、あなたが高齢者で、女性であり、なおかつ大学生の孫がいるならば、用心のため、この時期はあまり出歩かない方がいいかもしれない。
今回紹介した「大学授業の心得」は大学の先生たちの間では有名な本であり、著者が数学者であることから、とくに数学を教えている先生には非常に参考になる。これを読むと、大学生に数学を教えることがいかに大変な仕事であるかがわかる。