9月24日に数学教育学会(於 愛媛大学)で、植野義明先生との共訳書『数学と認知科学』に基づいたシンポジウムが行われ、監訳者の植野義明先生、認知科学がご専門の松中義大先生が講演されました。私は、訳者として拝聴してきました。
『数学と認知科学』は、アメリカの認知言語学者であるGeorge Lakoff、心理学者であるRafael E. Núñezが2000年に出版したWhere mathematics comes fromの訳書です。詩的な表現として考えられていたメタファー(隠喩)は、認知言語学では「ある概念領域を別の概念領域を用いて理解する事」と定義され、実は私たちがふだん無意識に使っている表現が実はメタファーで成り立っているということを、Lakoffは追及してきました。そして、この本では数学的概念や抽象的概念とはどういうもので、人間はそれをどのようにして体得していくのか、数の体験がどのように身体化されていくのかなどメタファーの観点から説明されています。点、直線、集合、虚数、無限は私たちはどのように理解しているのかなども扱われています。
シンポジウムではまず松中義大先生が、メタファーとは何かという基本的な話をなさいました。
そのあとで、植野義明先生が数学のテストの誤答は、概念と概念の結びつきがまちがっていることが原因ではないかと、誤答例を示しながら説明なさいました。
訳書は昨年の12月に出版されましたが、多くの数学関係の方から興味をもっていただいているようで、『数学セミナー』という雑誌の4月号でも書評をいただきました。原書(英語)は平易で軽い英語で書かれていますので、そちらも是非是非手に取ってみてください。
学会とは関係ありませんが、会場の愛媛大学からの帰りに、ミカンジュースの出る蛇口を農協の運営する野菜の販売所で発見しましたので、ついでに写真を載せておきます!