工学部 基礎教育研究センター

会話という相互行為

アメリカの社会言語学者・言語人類学者であるジョン・ガンパーズ(John Gumperz)は、コミュニケーションの民族誌(Ethnography of Communication)の研究方法の枠組みと、社会学のエスノメソドロジスト(Ethnomethodologist)の会話分析の枠組みを用いて、異文化間コミュニケーション研究の中核を担ってきました。その研究は多くの研究者に受け継がれています。私もその一端を担っております。

彼の問題意識は、異なる文化・社会背景の人が同じ言語で話すときに、なぜ、たくさんの相手に対する誤解や、また不信感が生まれるのだろうかという点にありました。たとえば、日本人とアメリカ人が英語で話すときに、日本人が礼儀正しくしたつもりが、アメリカ人には失礼にあたるようなことがあります。日本人が使っている英語に間違いがあるわけではないのに、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

これは、だれでも会話をしながら自分の生まれ育った文化・社会では当然このようにするだろうということを期待しながら話しているからです。自分にとって当然のこと、あたりまえのことは、他の人にとっては当然でもあたりまえでもないということです。日本語で話していてもそのような経験はあるかもしれませんが、母語が異なったり、出身の文化が異なったりすればするほど「あたりまえ」の差が大きくなります。そしてこれは、外国語だけを完璧にしても国際社会では通用しないことを意味します。

ガンパーズは残念ながら昨年91歳でこの世を去ってしまいましたが、異文化間コミュニケーションや社会言語学を学ぶ人は必ず目を通さなければならない論文をたくさん書いています。12月の「現代社会と人B」で学生さんにはお話する機会がありますので、ご紹介する予定です。

【写真の説明】9月にインド工科大学でガンパーズの追悼の会があり参加してきました。右の写真の人がガンパーズです。ガンパーズは若いころにインドの言語地図作成のプロジェクトに参加し、その時の写真なのでインドの民族衣装を着ていますが、実は彼はドイツ人で高校生の時に家族とともにアメリカに移住したのです。

ちょっと一言

読書の冬?

大学公式サイトはコチラから
KOUGEI PEOPLE 東京工芸大学 学科・コースブログ集

最近の投稿

アーカイブ

大学公式Webサイトで
工学部・芸術学部の詳細を見る

PAGE TOP