工学部 基礎教育研究センター

5 籠目編みで作るセパタクロー

7月31日は、7月の最後の日曜日だった。そして、厚木市にある筆者の勤務している大学では、「わくわく工芸ランド」というイベントがあった。これは、イベント系の全国紙を通じても広報しているらしいが、主として県内、近隣の小学生を対象とするお祭りで、まあ、昔で言う縁日のようなもの、と言ったらわかりやすいだろうか。筆者はあまり詳しくは知らないのだが、建物の外のテントでは、金魚すくいなども例年やっているらしい(今年はなかったらしい)。例年、2000~3000人くらい(?)の集客があるが、今年は雨模様の天候と、節電のため午前中だけに縮小して行ったので、参加総数は650人だったそうである。

ところで、縁日と言えば、私がご幼少(?)のころ住んでいた東京都文京区の動坂というところでは、毎月3回、7の日(つまり、7日、17日、27日)の夕方は縁日であった。動坂の坂道に沿っていろいろな夜店が出たものだった(懐かしいですね)。

筆者の研究室は、このところほぼ毎年のように、紙紐を使って籠目編みという日本の伝統的な編み方で小さなボールのような形を作る講座を開いている。編み物教室? まあ、それに近いかも。この紙紐で編んだボールのような形が、東南アジアで盛んなセパタクローという球技のボールと全く同じ形なので、出し物のタイトルは「籠目編みで作るセパタクロー」とかなんとか、毎年だいたいそんなタイトルにしている。

  • 2008年7月26日(土) 籠目編みで作るセパタクロー
  • 2009年8月1日(土) お休み
  • 2010年8月1日(日) 籠目編みで作るセパタクロー
  • 2011年7月31日(日) 籠目編みで作るセパタクロー

籠目編みの「籠目」という名前の由来は、籠などを竹で編む編み方というところから来ている。これについては、昨年、ちょっとだけ調べて、「数学セミナー」という雑誌に載せたことがある。(興味がある方は、エレガントな解答を求むという記事をご覧ください。)籠目編みの基本は6角形の目(目とは編んで出来る穴のことである)だが、そこに5角形の目を混ぜることにより編みあがった面に丸みをもたせる。正曲率の曲面になるわけである。5角形が12個、6角形が0個でできる球面がもっとも目の少ない球面になる。それが、たまたま、古くから木のつるなどを編んでボールの形にし、足で遊んだセパタクローの編み方と同じなので、私たちはセパタクローと呼んでいる。3角形の目も自動的にできるのだが、まあ5角形だけに注目して、どこを頂点と考えるか自分で適当に決めれば、そこに正12面体が厳然と現れていると言って言えなくもないのだ。

いま、建築学科4年生にいる中下さんが、1年生だった年にアシスタントをした。このときもセパタクローを作ったので、途中、お休みだった年が1回あったにせよ、もう4年も同じテーマでお店を開いていることになる。

本当はテーマを毎年変えたい(実行委員会からも、去年と同じテーマでないものをやってほしいと言われている)のだが、前の年にアシスタントに入った学生が、春にキャンパスで私を見かけたりすると、「先生、今年もセパタクロー、やらないんですか?」と、すごく楽しそうに言ってくる。そういうわけで、テーマを変えようにも変えられないのである。また、実際、参加した子どもたちも大変楽しそうで、それが口コミで広がり、地域の皆さんも、毎年、このセパタクロー作りを楽しみにしているみたいなのだ。まさか、リピーターはいないと思うが、毎年、午前、午後、それぞれ40人定員の教室にいっぱいの人が来る。

対象年齢は、講座を始めた当初、小中学生としていたが、だんだんと参加者が低年齢化しており、今年は小学校3年生以上とパンフレットには書いておいたのだが、明らかに小学校1年生~3年生ぐらいが中心層だった。

何はともあれ、下の写真に写っている子どもたちの笑顔を見ていただきたい。

この写真は大学の専属(?)のカメラマン氏が今年撮ったものだが、なかなかうまく撮れていると思う。他の講座の写真も見せていただいた(大学のHPに載っている)が、どれも参加者が熱心に何かを作ったり操作したりしている。しかし、笑顔の瞬間を撮るのはなかなか難しいらしく、この写真のように参加者が満身の笑顔をたたえて写っているのは(多少「ヤラセ」の感はぬぐえないが)、我がセパタクロー教室だけのように思われる。

さて、セパタクローの作り方については、参加者の皆さんの復習のためと、残念ながら参加できなかった方たちのために、いずれ稿を改めて詳しく、図入りで述べたい。

セパタクローの制作は、最初の5本の紙紐を組み合わせるところまでは簡単で、すいすい進むが、最後の6本目の紙紐を赤道のような形に通して環(わ)を完成するのがけっこう難しい。黒板に図を描くのも難しい。写実的な図というよりは、概念的な図、アイデアだけを示した図になってしまうのは、仕方がないことだろう。

その「赤道」に差し掛かったところで、学長の若尾さんと厚木市長の小林さんが教室に入ってきたのにはびっくりした。小林さんが、小声で「一言皆さんにご挨拶をしたい」とおっしゃるので、こりゃあ大演説が始まるなと思って期待していたら、「みなさんこんにちは。市長の小林です。楽しんでますか?」と言った程度の簡単な挨拶だった。若尾さんも、ニコニコして、参加者の話を聞いていた。

わくわく工芸ランドは、大学のキャンパスで12年前から行われているイベントだが、その広報には厚木市がかなり力を入れてくださっている。厚木市の広報誌には、内容や申し込み方法が載っているほか、終了後にも、参加体験談のような記事が市のHPに載っているようである。

今回の記事はこの辺にして、後は、当日に撮った写真を掲載したい。

(この項おしまい)

まず、自分の好きな色のところに並んで、紙紐を45センチに切ります。

どの色がいいかな。

東京立正高校の数学研究部の生徒たち4名もがボランティアでアシスタントとして参加しました。(全員、高校2年生)

わかるように教えるのは難しいということがわかった(感想)。

数学研究部の部長(高校2年生)

アシスタントで参加した工学部建築学科の学生(1年生)

おばあちゃんと一緒に参加しました。

高校の数学研究部の顧問の先生。

もくもくと作業して。。。

みんな、熱中しています。

できるかな。立ち上がって教えに行く保護者。

最後に、記念撮影をした。「作品を手に持って、前に集まってください」 どの子の表情からも、やり遂げた満足感と自信が読み取れます。

2個作って、大満足のようす。「先生、ツーショットでお願いします!」

(ギャラリーおしまい)

ASIATEFL(3)

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