電気電子コースの豊田です。残念ながらコロナ感染が収束するには、まだ時間がかかりそうです。
工芸大では、前期の講義が5月11日から開講します。感染拡大を防ぐため、暫くの間はリモート(遠隔)講義が行われ、現在、教員の皆さんが工夫しながら準備にあたっています。私は、主に光学やレンズ設計に関する講義や演習を担当します。遠隔で講義や演習をする上で一番困るのは黒板がないことです。大学の講義室には、大きな黒板が4面あります(2面づつ上下に動くアレです)。板書に時間がかかることで、講義の進行や分量が丁度良くなること、また、多くの板書を一度に見られることが、この黒板の利点です。さらに、ノートを取る皆さんの様子から、理解が進んでいるかが教員にフィードバックされます。使えなくなって、大学の4面黒板という「メディア」が、暗記にたよらずに、じっくりと物事を考える物理分野の講義に適していたと、再認識しました。 遠隔講義では、黒板は使えませんから「メディア」を代える必要に迫られます。時間をかけて練った講義の中身を、できるだけこれまでと同等に学生の皆さんへ伝えることができる「メディア」を選ぶ必要があります(もちろん、限られた時間・コストの中でですが)。作図や数式が多いレンズ光学の講義では、PCにつないだ書画カメラで、講義ノートや作図を撮影することで黒板の代わりにしています。上の写真は、講義ビデオの配信に使っているYouTube Studioの例です。ノートに色ペンで書き込んだり、製図用具を使い光線作図を実演することもできます。それでも、書画カメラは黒板1面分くらいの情報量しかなく、4面黒板には及ばないのが実感です。受講する学生の皆さんの工夫で、動画を止めたり、巻き戻したりすることで、補いながら受講することも大切と考えています。
黒板を失ってみて、人間の目の視覚情報の豊富さや、対面コミュニケーションの大切さを改めて痛感しています。数値計算には圧倒的な力を持つPCも、講義用のメディアとしては人間とのインターフェースの部分でさらなる工夫や進歩が必要なのかもしれません。学生の皆さんは、自宅で遠隔講義を使い学問を続け、コロナの収束を待ちましょう。もちろん、健康には特に気をつけて。4面黒板のある講義室で、皆さんとお会いできることを願っています。