3年次後期 建築設計製図V 授業の様子をご紹介します。本学の建築設計製図は1年次より4年次の卒業設計まで、小さな建築のデザインに始まり最終的には都市的な提案まで行えるよう段階的かつ体系的にカリキュラムが組まれています。また、全ての設計製図の授業を学生20名ごとに教員1名が指導するマンツーマン教育をモットーとしており、設計製図に関しては相当丁寧に教育を行っています。それというのも、工芸大の全ての卒業生には建築士の資格を取得して優れた建築を生み出してほしいという設計製図担当教員の熱い思いがあるからです。
3年次後期は地元本厚木の中心市街地を対象とした課題が二つ、前半は「厚木市中心市街地改造(改善)計画」と称する課題で、4-5名ずつのグループごとに厚木の地域としての歴史や風土、文化、産業面でのソフトリサーチを行なった上で、中心市街地に関する現状の良い点、悪い点などについて問題意識を持ってハードリサーチも行い、今後のまちづくり、中心市街地の改善に寄与する提案を行います。後半の第2課題は、第1課題で理解した本厚木の街の中心部、バスターミナルに面した敷地に「情報ライブラリー」を設計する課題です。
今日はこの第1課題についての紹介です。今年度も学生ならではの視点からの良い提案が集まりました。例えば、中心市街地においては大型店舗の撤退などにより、本来は商業的な用途の中心市街地に平置きの駐車場が増加して街のにぎわいを阻害している現状があります。今年のチームGは、中心市街地に分布する駐車場の利用率をリサーチし、立地により利用率の小さい駐車場があることに着目。平日と休日の時間帯によってもあまり駐車されない時間帯と多く利用される時間帯があることを把握しました。そこで、これらの駐車場の中でどこが空いているかのデータベースを作り、スマホ利用で空いている駐車場をすぐに見つけて支払いもできるソフトを利用する提案をしました。このソフトを活用することで、利用率の低い立地の駐車場全体を、①常時駐車可能なスペース、②車の少ないときは広場や市民の居場所に変われるスペース、③常時広場や市民の居場所として使えるスペースに分類して再編し、ユニークなランドスケープを作り出しました。また、市民の居場所として使えるスペースをサポートする移動可能な倉庫兼用あずまや、植栽ポッド、椅子テーブルのセットをデザインし、提案に盛り込みました。彼らの提案は、他の都市にも数多く見られる平置きの駐車場を、車の増減により変化する場、都市の呼吸が見られる場として捉え、その呼吸そのものを単に車の増減でなく、市民の居場所にも結びつけた提案で、非常にユニークで現実味を感じさせる提案でした。そのほか、中心市街地をより市民に親しまれる場所とするために、商業施設が撤退した跡地で露天駐車場となっている敷地に、子育てをテーマとするコミュニティー施設を作る提案や、流れるような曲線の屋根と人々のためのベンチを組み合わせた曲面で商店街のイメージをガラリと変える提案など、学生ならではのフレッシュな提案が集まりました。
本課題の作品は次年度に一般公開の「あつぎの街!を考えるワークショップ」にて発表も行います。ワークショップにおいては各グループの作品とアイデアを発表した上で、参加してくれた市役所、商店街組合の方々や一般参加の方々とディスカッションを行い、これからのまちづくりについて共に考えていきます。学生にとっては普段学んでいる建築デザインの社会的な意味を改めて実感できる貴重な体験の場となります。