今年度のリレー連載は、基礎教育の教員がこれまで読んだ本や映像作品などの中で、⾃分の⼈⽣に⼤きな影響を与えたと思われるものを紹介していきます。機会がありましたら皆さんもぜひ手に取ってみてください。今月は福田豊先生にご寄稿いただきました。
人生の転機となった私の一冊 ベティ・エドワーズ『内なる画家の眼』
私の人生の転機となった一冊はベティ・エドワーズ著 北村孝一訳『内なる画家の眼』です。この本の内容は「絵は才能ではない、脳の使い方が重要で、脳の使い方を知れば、描写力だけでなく創造力も高まる。その考え方と具体的なトレーニングの方法」といったものです。
初版は1988年で、私が高校性の頃です。当時私には親友と言ってよい友達がいました。彼は、堂々と「俺は将来画家になる。」と宣言し、美術に並々ならぬ情熱を持ち、探求を続けていました。一方私は、模型や工作が好きだったものの、将来のビジョンが描けず、学業も今一つでした。彼は、そんな私に「福田!一緒に美大に行こう!」と声をかけてくれました。私は、デッサンをやったことがないと伝えると、これを貸してやる。と渡されたのがこの一冊でした。
絵画に苦手意識があり、本の内容も難解で、あまり気が進みませんでしたが熱っぽく本の内容を語る彼に押されて本を読むことにしました。
少し読み進むと、本の中に、大学でデッサンの授業を担当していた筆者の授業の紹介文として「この科目は、まったく画を描けない学生、描く才能がまったくないと感じている学生、描くことを学ぶことなど到底無理と思っている学生のために開講します」と記されています。そして、筆者の講座を受け終わったとき、苦手意識のある学生でも、絵を楽しみ、上達していると書いてあるのです。
私は、デッサンの練習を始めるとともに、本書の内容の理解と順番に課される絵画のトレーニングをこなしていきました。するとデッサン力も徐々に上がり、対象物を見る眼や脳の動きが以前とは違ってきたことを実感しました。今までの、一生懸命たくさん描けば、自然とうまくなるという認識を打ち砕き、理論とトレーニングで目的に到達するという科学的な手法に感銘を受けました。
私と彼のその後ですが、私は、浪人を経て志望校の彫刻科に進学することができました。彼は紆余曲折あり、志望校への進学はかなわなかったものの、専門学校を経てプロの漫画家になりました。今は、月日が立ちすぎて連絡が途絶えてしまいましたが、今でも彼の言葉や美術に対するまなざしを忘れることがありません。
彼が、声をかけてくれてこの本と出合わなければ、美術の道に進んでいたかすらわかりません。まさに人生の転機になった一冊です。
ベティ・エドワーズ著 北村孝一訳『内なる画家の眼』エルテ出版 1988年.

残念ながらこの本は本学図書館には所蔵されていませんが、英語の原著を別の訳者が翻訳したものが中野図書館に所蔵されています。
ベティ・エドワーズ著 高橋早苗訳『内なる創造性を引きだせ』河出書房新社 2014年 請求番号: 725/E 書誌ID: 3000021092

















