芸術学部 基礎教育

リレー連載10月号:「ウサギと暮らす日々」

*この記事は基礎教育教授 石川健次が執筆しました。

10月のリレー連載を担当する石川健次です。今回のお題は「私の日常」。頭のなかで「日常、日常……」と反芻(はんすう)しつつ、思い返してみました。浮かんでくるのは大学や美術館、ギャラリーを行ったり来たり、ときに親しい画家らアーティストと杯を重ね、雑誌の締め切りに追われる、まさにルーティンのような日々――。と思いめぐらしたそのとき、目の前を黒いウサギが駆け抜けました。名前はピョンタ、9歳です。

30代の頃、野外彫刻展を見るためにイギリスの湖水地方を訪れました。その際、同行者に誘われるまま、世界で最も有名なウサギと言っていいピーターラビットの生みの親で知られるビアトリクス・ポターが暮らした家などゆかりの場所を訪ね歩きました。遅ればせながらピーターラビットの話に初めて触れ、ウサギを通して生命や自然の尊さをやさしく語りかけるポターの思想にも触れ、瞬時にピーターラビットの、ウサギの大ファンになりました。以来、ウサギと一緒に暮らすようになって20年余りが過ぎています。

ウサギが、ピーターラビットが大好きな私には、今年は忘れられない年になりそうです。ポターの生誕150周年を記念する「ピーターラビット展」が、東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムを皮切りに全国5カ所で開催されているからです。東京展は終了し、10月末からは福岡市の福岡県立美術館(10月28日~12月11日)で巡回展が始まります。以後、仙台市のTFUギャラリーMini Mori(12月20日~来年2月1日)、大阪市のグランフロント大阪北館ナレッジキャピタルイベントラボ(同2月11日~同4月2日)、広島市のひろしま美術館(同4月15日~同6月4日)と続きます。

早々に私は東京展へ出かけました。全24冊に及ぶ「ピーターラビットの絵本」シリーズの第1作目『ピーターラビットのおはなし』は当初、自費出版(私家版)で刊行されました。原点ともいえる第1作の原画44点をはじめ出品作の多くは本国のイギリスを離れたことがなく、日本初公開です。死んだヘビやコウモリや野生のウサギの骨格を知るために熱い湯で煮て、骨を部位ごとに分け、計測とスケッチをした――など、思春期の頃のポターの日常がうかがえる彼女の日記が紹介されているなど秘話やエピソードも盛りだくさんです。

会期中、結局3度訪れ、ランチョンマットやクリアファイル、小皿などグッズもたくさん買いました。お気に入りのトートバッグは1回使っただけで家人の手に渡り、どこかの会場にもう一度出かけようかとあれこれ思案している真っ最中です。

さてピョンタは居間で放し飼いのため、コロコロウンコがときに散らばったりします。朝起きてまず私がすることは、100円ショップで買ったちり取りを手にコロコロウンコの始末と朝ごはんにニンジンをすってあげることです。手のかかる家族ですが、ウンコが散らばっていない日が続くと体調が悪いのかと心配になります。ピョンタをモデルに図版に挙げたような写真を撮って楽しむのも私の大切な日課です。あっ、そういえば今日、コロコロウンコが散らばっていなかったような――と思いめぐらしたとき、ふと目の前を青い小鳥が飛んでいきました。名前をシーちゃん。今春、家族になったばかりです。

実は40代に入った頃――と、おしゃべりが過ぎたかもしれません。青い小鳥をめぐってはいずれまた……。

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