こんにちは!基礎教育助教の小田です。9月の「今月の一枚」は、私が担当いたします。
私は、ここ数年、ミニシアターに行くことが増えました。ミニシアターとは、辞書によると、「独自に選んだ映画を上映する映画館。規模が小さく、座席数300以下のものをいう場合が多い。単館劇場。(デジタル大辞泉)」のことで、「主に芸術性の高い映画などを上映する。(大辞林)」とされています。もしかしたら、ここで本学の卒業生や在学生の作品が上映されるかも……!という気持ちから、ミニシアターに行くと、ちょっと心が弾みます。
さて、先日、私は川崎アートセンター内のアルテリオ映像館とういうミニシアターに行ってきました。川崎アートセンターは、2007年開館の比較的新しい施設で、外から見ても立派な建物ですが、中も明るくてとてもきれいでした。
そして、センター内にあるアルテリオ映像館は座席数が113席(車椅子2席含む)の、まさに「ミニシアター」です。(「ミニシアター」という分類は、もともと映画館のキャパシティとは関係がないとする説もあるようですが、とはいえ実際にはやはり小規模な映画館が多いようです。)
今回見たのは、「ローサは密告された」という映画でした。
ダンテ・メンドーサというフィリピン人監督による映画で、ポスターのコピーは「雑貨を売る。麻薬を売る。それが日常。」と、ちょっと刺激的です。内容は、チラシに「ローサはマニラのスラム街の片隅で小さな雑貨店を経営している。家計のため、少量の麻薬を扱っていたが、ある夜、密告からローサたち夫婦は逮捕される。麻薬売人の密告要求、高額な保釈金……警察の要求は恐喝まがいだ。この国では法は誰も守ってくれない。ローサたち家族は、彼ら自身のやり方で、したたかに、汚職にまみれた警察に立ち向かうのだった。」、「マニラ、東南アジア最大のスラム――フィリピンを蝕む麻薬撲滅戦争の暗部にカメラは入り込む」と紹介されていました。
麻薬を売らなければ、仲間を密告しなければ、腐敗した警察組織と交渉しなければ生きていくことができない現実が、主人公ローサとその家族にとってあたりまえの日常です。作中、逮捕されたローサ夫妻に対し、警官が法外な保釈金を要求し(自らの懐に入れるため)、彼らの子どもたちが金策のために奔走します。家にあるものを売り、ツテを頼って借金し、売春をし……。
「売春なんてよくないことだよ。やめなよ」と言えるような状況でないことに、胸を痛めました。そうしなければ生命を脅かされる状況で、「よくないことだ」という言葉は「機能」しません。改めて、言葉と環境は相互に依存しあっていると考えさせられます。
なお、主役のローサ役を演じた女優ジャクリン・ホセさんは、2016年に第69回カンヌ国際映画祭で女優賞を獲得したそうです。
興味のある方はぜひご覧ください。
本学の卒業生や在学生の作品が上映されることを楽しみにしながら、またミニシアターに足を運びたいと思います。