芸術学部 基礎教育

2月の話:「家族」について考えてみる

<2015年度リレー連載第11回>

基礎教育助教の小田珠生です。

2月ももう半ばになりましたね。

2月といえば、去る2月8日(月)は2016年の春節でした。

春節とは旧暦の正月のことで、私が2013年から2年半住んでいた中国ではこの春節を盛大に祝います。華やかな飾りつけをしたり、一晩中爆竹を鳴らしたりして、それはもうにぎやかです。

(ちなみに、新暦1月1日の元旦は「祝日の一つ」程度の盛り上がりでした。)

私は当時、北京のある大学で働いていたのですが、学生は春節休みの前になると、故郷に帰って春節を家族と一緒に過ごすことを本当に楽しみにしているように見えました。

親戚が集まって、家族みんなで餃子を食べたりお餅を食べたりするそうです。

さて、今回は、この(中国の学生が家族で過ごすことを楽しみにしていた)春節と関連づけて、「家族」について考えてみたいと思います。

私が中国に住んでいた時に強く感じたことの一つに、「中国の人々は、自分の親をはじめ家族をとても大切にしている」ということがありました。家族のつながりがとても強いのです。

その背景には、儒教思想の影響もあるでしょう。

そして、「養児防老」、つまり「子どもを大切に育て、老後の面倒をみてもらう」という考えが、広く実行に移されているように思います。

当然、地域差や個人差はあると思いますが。

私がここで自分を振り返って痛切に思うことは、「習慣が消えてしまうのなんて、あっという間だ」ということです。

考えてみれば、私が子どもの頃は、お正月といえば家族そろって新年を迎えるものでした。

父方の祖父母の家に行き、餅つきの手伝いをし、皆で紅白歌合戦を見て、年越しそばを食べ、0時になったらお互いに新年の挨拶をして、初詣に行って…。

今は、ひどいときにはパソコンで仕事をしながら新年を迎えることもあります。

もちろん、今でも家族で昔ながらのお正月を過ごしていらっしゃるご家庭も多いとは思います。

けれども、私のように「あまりお正月らしくない」お正月を過ごされている方は確実に増えているのではないでしょうか。

このような変化の理由の一つに、経済発展に伴うグローバル化があると考えられます。

グローバル化による人・コト・モノの移動、中でも特に「人」の移動が、家族を分断してしまうことがあるのです。

例えば、海外勤務、留学、故郷から遠く離れた都市での就職、…。

親子の間に生じた物理的な距離が、心理的な距離につながることは少なくありません。

さらに、移動先の海外で国際結婚した場合、母(父)と子どもが最も容易に操れる言語が異なってしまうことも多く、親子の深いレベルでの意思疎通が難しくなるという問題も生じます。(私の博士論文のテーマでした。)

人間は自分を起点として、まずは家族、それから社会の様々な人々とネットワークを築いていくものです。

家族との関係が分断したままにならないように、関係をつないでいく必要があります。

ところで、話は少し変わりますが、2015年度リレー連載の第5回、「8月の話:絵本『タケノコごはん』」で大島武先生がご紹介になった、『タケノコごはん』はみなさんご覧になりましたか?

この絵本は、「世界のオーシマ」と呼ばれた映画監督・故大島渚監督が、ご子息である大島武先生のために書かれた作文がもとになっています。

戦争がテーマになっている絵本なのですが、内容に関しては皆さん各自でご確認ください。

私がここで触れたいのは、大島武先生がお書きになった「あとがき」についてです。

「父はよく、「自分で考えることができる人になってほしい」と、わたしに言っていました。(略)あのころの私にあと少しの想像力があったなら。父のこども時代の気持ちについて、さかいくんのようすについて、もっと訊いてみていたら……。その父はもうこの世にはいません。」

私見ではありますが、大島先生が、この絵本を世に出すことを通して今は亡きお父様とのつながりを改めてつむぎ出そうとなさっているように感じました。

この『タケノコごはん』という作品を通じて、大島渚監督の思いは空間・世代を超えて世の中に伝わっていくことでしょう。

作品の力は本当にすごいと思います。

芸術学部の皆さんは、何らかの形で作品をつくることと思います。

どのようなつながりを作り出す作品になるのでしょうか。

とても楽しみです。

[参考]

大島渚・文 伊藤秀男・絵(2015)『タケノコごはん』ポプラ社

日本テレビ「news every」で牟田淳准教授撮影の雪の結晶写真が放映されました

『はじめて学ぶ社会学』第2版が完成しました

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