芸術学部 基礎教育

2014年度リレー連載 第10回「『モクモク農場レストラン』と言語の関係について」

芸術学部助教 小田珠生

こんにちは。「日本語」「日本語表現法」「日本文学」担当の小田です。私は、「モクモク農場レストラン」をおすすめしたいと思います。

・「農場とのつながりがちゃんと見えるレストラン モクモク農場レストラン」 http://www.moku-moku.com/tyokueinew/index.html

(残念ながら、レストランは関東にはないようです……。私が行ったのは名古屋のお店「元気になる農場レストランモクモク」ですが、三重をはじめ大阪、滋賀に7店舗あります。そちら方面にいらした際に、ぜひ。なお、ハム・ソーセージや野菜などが買える直売店は東京ミッドタウンにもあります。)

こちらのレストランは以下の「5つのお約束」を掲げています(HPより)。

(1)おいしいだけでなく体にやさしいメニューづくりを心がけます

(2)みんなといっしょにECOについて考えます

(3)原料の種類・産地名、料理方法はできるだけ公開します

安心して食べていただきたいから…

(4)スローライフを提案します

(5)笑顔と元気と温かさでお迎えします

先月、これらの約束に基づいたこだわりの野菜やソーセージ、料理をビュッフェ形式でいただいたのですが、お子さんからお年寄りまで安心していただけるような、大変身体に優しいお味がしました。私たちが普段食べているものには何か異物が入っていて、刺激があるのだということに改めて気づかされます。

この「モクモク農場レストラン」は、三重県伊賀市にある「伊賀の里モクモク手作りファーム」直営のお店です。「カンブリア宮殿」というTV番組などで紹介されたことがあるので、ご存知の方も多いかもしれません。

・日経スペシャル カンブリア宮殿 HP

「「農業は楽しいぜぇ、夢があるぜぇ」過疎の町に年間50万人50億円!奇跡の農業テーマパーク」  http://www.tv-tokyo.co.jp/cambria/backnumber/20120426.html

この「モクモク手作りファーム」は、1987年に木村修さんと吉田修さんというお二人の修さんが始められた、食べる人の視点に立ち、農業を大切にする農業のテーマパークです。お二人の修さんは、日本の農業に危機感を抱いて当時の職場を辞め、地元の養豚農家と「食べていける」農業を目指して立ち上がったとか。ここでは、ハム・ソーセージをはじめ300種類以上の製品がつくられ、それをレストランで食べたり購入したり、体験学習したり、温泉に入ってくつろいだりすることができます。事業としては、ファーム事業、通信販売事業、レストラン事業の三つで成り立っており、生産(1次産業)と加工(2次産業)、流通・販売・サービス(3次産業)を統合したいわゆる6次産業化の先駆として国内外で知られている施設です。

さて、私の専門は日本語教育ですので、この「モクモク」の設立・運営を「言語活動」という視点から捉えてみたいと思います。

人間の活動は言語活動そのものである、と言ったのはドイツのホーゲン(Haugen)という学者です。人間の社会(政治、経済、教育……)は、言語のやりとりによってつくられ、成り立っており、私たち個人の生活も、その人の言語のあり方によって左右されます。

例えば、私は昨年の冬まで北京で二年半ほど働いていましたが、中国語がままならないと、行動範囲やできること、人間関係の構築が制限されてしまいます。そのことは、積み重ねられるはずの経験を乏しいものにし、精神的な状態へも影響することを、身をもって体感しました。

これは、外国語環境に限られたことではありません。母語・外国語に関わらず、自分の言語を社会で十分に機能させられるかどうか、そしてどのように機能させるかがその人の生き方を左右するのです。

芸術の道に進みたいから、作品をつくって生きていくから自分に言語は関係ない?いえいえ、その作品をつくるに至ったあなたという人間は、何らかの形で言語(音声、文字、その他……)によって支えられているはずです。また、その作品を社会的に位置づけ、評価するのもまた言語です。

話を「モクモク」に戻します。「モクモク」を設立したお二人の修さんは、言語を介して社会の問題に気付き、言語によって疑問を提示し、言語を使用して行動を起こしました。そして、彼らの言語を伴うネットワークの構築や活動の先に、私たちの身体に優しい野菜やハムやソーセージ、人々の仕事があるわけです(私に「モクモク農場レストラン」を紹介してくれた大学院時代のゼミの仲間は「モクモク手作りファーム」にも行ったそうですが、そこで働いている方々がとてもキラキラしていたと言っていました)。

言語が見事に「機能」しているといえないでしょうか。言語はただ使うことができればいいのではなく、社会でどう「機能」させるかが大切だということに気付かされます。

皆さんの言語は、うまく「機能」していますか?

何のために言語を「機能」させたいですか?

以上、「モクモク」のおすすめと、言語の捉え方のご紹介でした。

それでは、また!

【参考文献】

岡崎敏雄2009『言語生態学と言語教育-人間の存在を支えるものとしての言語-』凡人社

木村修、吉田修、青山浩子(2011)『新しい農業の風はモクモクからやって来る』商業界

小田急沿線の美術館散歩

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