7月31日(月)、今年も三善ゼミによる「映像から受ける印象についてのアンケート調査結果発表会」が行われました。
アニメーション学科の三善ゼミは毎年アンケート調査を行って来ましたが、昨年までは「映像の中でキャラクターが移動する向きは、それを見る人が受ける印象に影響を与えるのか?」ということを、7年間調査し続けてきました。しかし今年はテーマを改め、「カットを繋ぐ順番を変えると、印象にどれ程差を生じるか?」をテーマとして、初めての調査を行いました。
調査は7月7日と8日の2日間に行われ、その模様はこちらで既にお伝えしておりますが、その調査結果を細かく分析した内容が、学生たちによって発表された訳です。
今年の三善ゼミ所属学生は、3年生5人に研究生1人、アメリカの大学から来た科目等履修生が1人で、合計7人という少数ながら、その内3人が外国籍(しかも全員別々の国)という多国籍ゼミです。
発表は全て学生たちの手によって作られたスライドが用いられ、彼らが順番にマイクをバトンタッチしながら手際よく進められていきました。これも彼らが事前にしっかり練習を重ねた賜物です。
アンケートの内容は、学生が制作した30秒程度のアニメーションを被験者に見てもらい、それを見た印象について答えてもらうというものでした。アニメーションの内容は、男性キャラクターと女性キャラクターが画面左に向かって走って行く映像です。それぞれ別カットで、二人が一緒に登場するカットはありません。先に女性キャラクターが走るカットがあって次に男性キャラクターが走るという映像と、先に女性キャラクターが走るカットがあって次に女性キャラクターが走るという映像の2種類作り、その内一方を見てもらって、「どちらのキャラクターがどちらのキャラクターを追いかけているように見えるか」というのが主な質問です。
その印象に(キャラクターの性別以外に)何が影響を与えたのかを見るために、男性女性、それぞれのキャラクターの印象について相応しいと思われる言葉にチェックを入れてもらう質問もあります。あとは被験者の年齢層、性別を答えてもらいます。合計5問です。映像はiPadに収め、それで再生しました。
結果は…、個々の学生が描いたキャラクターの印象が本当にバラバラだったので、学生別に見ると何がどう影響したのか容易に掴めない、それぞれに非常に異なるデータが出ました。
ところがそうした個々にバラバラなデータを一括りにして見ると、やはり先に登場した方が前を走り、後から登場した方が後ろを走る、従って後から登場したキャラクターの方が「追いかけている」方だと感じる人が多いという明確な結果が出ました。更にキャラクターの性別でいうと、カットの順番に関わらず、全体としては女性キャラが追いかけているより男性キャラが追いかけている方だと感じる人の方が多いという傾向も認められました。
従来の映像演出法はこのようなことを、実証実験の結果に基づくのではなく、単純に「きっとそうであるはず」という曖昧な根拠に頼って作り手の意図が作品に込められてきた訳ですが、「こう仕掛ければ観客は本当にこう感じるのか?」という実験は、実は殆ど行われた試しがありません。そうした過去を考えると、今回500人近い人達から得た回答を分析して得られたデータというのは、大変貴重なものであると言えます。
最後にこの調査にあたった7人の学生がズラリと並び、発表会に足を運んで下さった方々に深々とお辞儀をして発表会は終わりました。約1時間を予定していましたが、実にテンポ良く、殆ど予定通りの時間に終えることが出来ました。厚木から1年生が3人も来てくれたのも、とても嬉しかったです。忙しい中時間を割いて聞きに来て下さった先生方にも、心から感謝です。素晴らしい聴衆がいて下さったことで、素晴らしい発表会になることが出来たのだと思います。