一年生「マンガ学概論A」の授業にて、メディアアーティストで東京藝術大学准教授の八谷和彦先生のゲスト講義が行われました。
八谷さんは、『風の谷のナウシカ』に登場する一人乗り飛行機「メーヴェ」を実際に作って飛ばしてみようという「OPEN SKY プロジェクト」など、ユニークな活動で知られるアーティストです。
その発想や活動の源には「マンガ」があり、そうした「マンガ」からの発想や想像力、なにより「実現すること」についてお話をいただきました。
■「空想」を具現化すること
たとえば、1990年代、メールの送受信が大変だったころ、「メールの送受信をたのしくする」ツールがほしいという気もちから開発され、大ヒットしたPostPet。この制作会社であるペットワークスの成功が、後の八谷さんの活動の基盤となっています。そのPostPetのおおもとの発想は『ジョジョの奇妙な冒険』第三部に登場するスタンド、「ハーヴェスト」からのものだそうです。
「空想のなかにしか存在しないものを現実のものにしたい」と考え、着実にものづくりをしていくという活動は、リアルに「メーヴェ」を作って飛ばそうというプロジェクトでも、自分たちの手で宇宙に届くロケットを飛ばそうというプロジェクトでも、ずっと一貫しています。そうした実例について、スライドなどを使って紹介していただきました。
■「中二のまま生きる技術」――好きなことをやり続けて生きていくには……?
「中二のまま生きていくことはできないが、『中二のふり』をして生きることは可能」
そのためには、「好きな対象」「自己表現」「知名度」「収入」を合致させる技術が必要だと、八谷さんは語ります。
また、八谷さんはマンガやアニメなどからインスパイアされて、ほかの形、ほかのメディアで展開する活動を続けてきました。マンガ→マンガではなく、ほかのメディア、小説や映画などに触発されて、そこから新しい発想をマンガで展開すると、意外とみんな、褒めてくれたりする……。
マンガが、表現としても、市場としても大きく変貌することが予想される将来を見据えると、柔軟な発想と、幅広い視野は重要です。熱心なぶん、とかく目の前の「マンガばかり」を見がちになるマンガ学科の学生に、そうしたことの大切さを伝えてくれる講義でした。