今年度のリレー連載は、基礎教育の教員が目を引いたり、皆さんに紹介したい光景などをもとに文章を綴っていきます。今月は橘野実子先生にご寄稿いただきました。
基礎教育の橘野実子です。
あっという間に年の瀬を迎えましたが、皆さんにとって今年はどのような一年だったでしょうか。
この時期、日本のあちこちで新年の準備をしていますが、伝統芸能である歌舞伎の世界では「顔見世(かおみせ)」興行が行われます。もともとは翌年一年間の出演者を披露する、いわば「新シーズンの顔ぶれ発表」の場でした。現在は興行の形態も変わりましたが、人気役者が勢ぞろいして新年の到来を告げる華やかな舞台であることに変わりはありません。
今月の写真は、京都南座と南座の「まねき看板」(略して「まねき」)です。このまねきは12月の京都の風物詩として知られ、劇場の正面入り口上部にずらりと並んでおり、独特の太く丸まった「勘亭流(かんていりゅう)」という書体で顔見世興行に出演する役者の名前が記されています。役者の名と、それぞれの紋は一点一点手書きされており、師走の劇場をいっそう賑やかに彩っています。 皆さんが知っている歌舞伎役者の名前は見つかりましたか。
この南座は、江戸前期に幕府公認だった7軒の芝居小屋のうち、今も同じ場所で歴史を紡いでいる唯一の劇場です。現在の建物は昭和4年に建てられた桃山風の建築で、国の登録有形文化財にも指定されています。一歩足を踏み入れると、アールデコ調の照明など和洋が溶け合うモダンな意匠が広がり、昭和初期の美意識を今に伝えています。京都を訪れる機会があれば、ぜひ足を運んでみてください。


















