芸術学部 基礎教育

リレー連載「研究紹介:『コンパクトライフ・プロジェクト』に関する一考察――インタビューデータの分析から」

こんにちは!9月のブログ担当、基礎教育助教の小田珠生です。

私はちょうど10月7日(日)から始まる芸術学部フェスタでインタラクティブメディア学科の野口先生と共同でポスター発表(展示)をさせていただくので、その内容について少しご紹介させていただきたいと思います。

以前にも少し述べさせていただきましたが、私の専門は日本語教育、つまり言語の教育です。そして私は、「人間の活動は『言語』に支えられている。言い換えれば、『言語』と一体化していると言っても過言ではない。」という考え方を大切にしています。なぜなら、人間は言語を使って思考し、他者との言語のやりとりによってネットワークを築きながら生活をしているからです。

しかし、近年の日本では、「言語」が機能していないことによるさまざまな社会問題が生じています。例えば、高齢者の社会的孤立は、人々の移動や価値観の変動が激しいために家族との関係(コミュニケーション)が分断されているからと捉えられるし、「巨大信仰」に基づくグローバルな競争社会が生み出したエネルギー問題や環境問題なども、政策側と当事者の話し合いや情報の不足が原因であると考えれば、実は「言語」がうまく機能していないからだと捉えられるのです。

さて、今回私が野口先生と共同で発表(展示)させていただくのは、「『コンパクトライフ・プロジェクト』に関する一考察――インタビューデータの分析から」というタイトルのポスターです。この研究では、日本と全く環境が異なるケニアのスラムで暮らすある女性にインタビューし、彼女がどのように自身が「言語」を機能させながら生活していると認識しているのかを探りました。

ケニア(正式名称:ケニア共和国)は人口が4,725万人(国連2016)であり、10の主要民族と、公用語である英語、国語であるスワヒリ語以外に40以上の民族言語を擁する多言語・多民族国家です。そして、様々な民族の人たちが故郷から仕事を求めて首都ナイロビに移住し、現在ナイロビのスラムの人口は増加し続けています(正確な人数は把握するのが難しいようです)。

今回インタビューしたケニア人女性・Eさんは、カカメガというところで生まれ育ちましたが、18~19歳の時に仕事を求めてナイロビに移住し、54歳の現在は都市部でハウスキーパーの仕事をしながらカワンガレというスラムに住んでいます。彼女にこれまでどのような人生を送ってきたかインタビューしたところ、故郷のカカメガで主に民族語のルイヤ語(マラゴリ語)を話す環境下にあったEさんが、圧倒的にスワヒリ語を使用する人が多いナイロビでも、血縁者との関係を継続させながらルイヤ語を使い続けていることが分かりました(下の図)。

例えば、Eさんはそもそも血縁者である叔母を頼ってナイロビのスラム・カンゲミに移住しましたし、そこで出会った夫もルイヤ語話者で、現在も娘にはルイヤ語で話しかけることが多いそうです。また、離婚後に他のスラム・カワンガレに移住した後も、カカメガから妹を呼び寄せて同じ職場で働かせたり、姪の子どもを引き取ったりするなどしてルイヤ語を使い続けています。民族語は、Eさんにとって最も扱いやすく、最も自分の気持ちを表しやすい言語でしょう。意識的か無意識かは分かりませんが、Eさんは血縁者との関係を継続させながら自分にとって暮らしやすい環境を保全しているのかもしれません。

今年度の芸術学部フェスタには、基礎教育からは5名の先生が展示に参加します。皆さま、ぜひご覧ください!

★芸術学部フェスタ2018

  • 期間:10月7日(日)~10月24日(水) ※ポスター展示は10月10日(水)~
  • 時間:10:00~19:00  ※10月14日(日)・21日(日)は閉館、10月24日(水)は16:00まで
  • 場所:東京工芸大学中野キャンパス

基礎教育の先生方の展示:

  • 田中康二郎先生「Ohne Titel」
  • 牟田淳先生「美しい顔はどんな顔?」
  • 松中義大先生「色と言葉の関係」
  • 大森弦史先生「近代ヨーロッパにおける色彩版画技法に関する研究」
  • 小田珠生・野口靖先生「『コンパクトライフ・プロジェクト』に関する一考察――インタビューデータの分析から」

田中先生の個展訪問

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2019年4月 芸術学部 中野へ集結。
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