*この記事は、大島武基礎教育教授が執筆しました。
3月ブログ担当の大島です。今は連日、橘野先生の「オーストラリア アート&英語研修のレポート」を読むのが楽しみです。普段は決してできないような刺激的な体験の連続!学生たちがちょっと羨ましいですね。
今回はこの国際化の波に乗って♪、私の異文化体験をご報告いたします。とはいっても、日本国内でのことですが・・・。まずは、写真①をご覧ください。
私(中央)と一緒に写っているのはバングラデシュ人の看護師さんたちです。この方たちは、独立行政法人国際協力機構(JICA)の事業「バングラデシュ看護臨地実習」の受講者として来日し、約1か月の日本での研修を終えて、先日帰国されました。プログラムの最後に「プレゼンテーション」の研修があり、私が担当させて頂いたのです。
バングラデシュ人の看護師さんを対象に、英語のスライドを使って、日本語で講義をし、ベンガル語に同時通訳してもらう・・・ちょっと珍しい経験でした。1日の研修でしたので、午前中は話し方に関する基礎的な講義、午後は画用紙に絵を描いてもらい、その絵を示しながら1人3分のプレゼンテーションを行ってもらうというプログラムにしました。受講者の方が実際に描いてくださった絵をご覧ください。
写真②は「蝶を祭った地元のお祭りの風景」(バングラデシュでは蝶は神聖な生き物とされる)、写真③は「日本の金閣寺を訪れたときのにぎやかな様子」とのことです。皆さん、ご覧になってどう思われましたか? いずれも許可を得てアップしている写真ですが、・・・・あんまり・・・その、上手・・では、ありませんよね・・・。私はこの絵を見たとき、「国ではスーパーエリートの看護師さんたちに『好きな絵を描いて』などと頼んだので、気分を害して、わざといい加減に描いているのでは?」と感じてしまいました。
でも、そうではありませんでした。通訳の人によると・・・。「先生、どの人も一生懸命描いています。バングラデシュ人は総じて絵が下手なのです。この世代の人たちは小中学校で音楽や図工の教育を全く受けていません。だから絵を描いたこともないし、歌も歌ったことがない。日本でカラオケに出会い『歌手でもない人が歌えるなんてすごい!』と驚いていました」。
話を伺い、かなりのカルチャーショックを受けました。この画力ですと本学デザイン学科やマンガ学科に入学するのは難しそうですが、全く学んだことがないのでは仕方ありませんね。本エピソードを紹介したのは、学生たちに「君たちは恵まれているんだよ」と説教したかったからではありません。むしろ自分への戒めとして捉えています。「これぐらいはわかるだろう」「当然これは常識だろう」と予断を持つことは、人にモノを伝える人間にとっては禁物です。よいコミュニケーションには想像力こそが不可欠、そう改めて感じさせてくれた経験でした。