<2015年度リレー連載第10回>
明けましておめでとうございます。基礎教育助教の橘野実子です。
皆さまの新年の抱負は何でしょうか。
年が改まると、気分も新たに何かに挑戦してみたくなるのではないでしょうか。そんな人へのオススメを一つご紹介します。
それは、“TED”です。
TEDと言っても、おしゃべりするおじさんのクマではありません!授業でTEDの紹介をしたら、クマのTEDのほうが知名度が高いことがわかったのですが、ここで言うTEDは価値のあるアイデアを世に広めることを目的とするアメリカの非営利団体で、その団体主催の大会で発表されたTEDトークというプレゼンテーションがウェブ上に公開されているのです。
さて、皆さん自身について、次の項目をチェックしてみてください。
- 動画を見るのが好きだ。
- 英語に興味がある。
- 英語を勉強したいけど従来のやり方では失敗してきた。
- なんとなく退屈している。
- スティーブ・ジョブズを尊敬している。
- 多様な考え方を短時間で知りたい。
これらのどれか一つにあてはまるとしたら、あなたにとってTED トーク の視聴は有意義で役立つ可能性が高いです。少なくともとてもよい暇つぶしになります。(いや、暇つぶしでは「新年の挑戦」にはふさわしくありませんね。)
TED の大会は北米で行われていますので、基本的に英語でプレゼンテーションが行われます。TEDは当初は技術、エンターテイメント、デザインの分野での発表を扱っていましたが、その後大きく広がり、今ではほぼすべての分野(科学やビジネスから地球規模の問題まで)を扱っています。発表者はグーグルの創始者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、U2のボノ、ビル・クリントン元米大統領などの著名人から、一般的には知られていないその道の専門家まで多岐にわたります。TED トークの特徴は、短くてパワフルなそのスタイルです。長いプレゼンでも18分、短いものは6分程度ですので、発表者の主張や考えが凝縮されていて聴衆を飽きさせません。また、ステージは聴衆に向かって張り出していて、照明は発表ごとにアレンジされ、音楽や映像も本格的。ビジュアル的にもオーディオ的にも学校で実施されるような「スピーチ大会」という感じではなく、プロの舞台を見ているような印象です。
このTEDが、退屈している人、動画が好きな人、短時間で新しいアイディアを知りたい人等にアピールするのはすぐにおわかりいただけると思いますが、英語学習にはどのように役立つのでしょうか。
TEDトークは英語のスピーチですが、TEDの公式サイトで視聴すると字幕を表示することができます。英語だけではなく各国語での字幕が準備されていますが、すべてのトークが多国語で見れるわけではありませんので、英語だけでは理解が難しい場合は日本語字幕のついたものを選ぶのも一つの方法です。また、トランスクリプト(書き起こし)も表示できますので、トークの全体の流れの中で該当箇所を確認することも可能です。さらに、トークによっては日本語の説明も付いていますので、どのトークを視聴するかの手助けになることと思います。
このようなTEDサイトの機能を活用すると英語学習に非常に有利です。英語を読むにも聞くにも、学習の原則は自分の現在のレベルよりほんの少し上のものを大量にインプットすることです。そして、自分にとって興味深い内容のものを教材にすれば、やる気が高まり学習効果が上がり挫折する可能性も低くなります。これらの条件を満たす教材として、TEDは最適だと感じています。
公式サイトには2000以上のトークがアップロードされていますので、その中から自分の興味とレベルにあったトークを探してみてください!そしてまずは、字幕なして見てみましょう。どのくらいわかりましたか?あまりにもわからない単語や表現ばかりでしたら、難しすぎるかスピーカーが早口なのかもしれません。別のものを検索しましょう。
なんとなく理解できる感じだったら、次に英語字幕を付けて視聴します。字幕はとても役立ちますが、話すスピードが文字を目で追う速さに勝ることがあるので、読み取れない部分はあきらめて先に進みましょう。これでトークの概要は理解できたと思います。まだよくわからないようなら、ここで日本語字幕付きでもう一度見ても構いません。繰り返し見ればますます効果は上がります。
英語力が上級レベルの人なら、この流れに沿って多くのトークを見るだけで英語力はアップしますし、初級~中級レベルでも、時間をかけてじっくり英語に取り組む覚悟ならこれだけでもだんだんと実力がつきます。
しかし、語彙力やリスニング力が特に弱いと感じている人や英語で自分の意見を話せるようになりたい人の場合は、もう少し分析的に取り組む必要が出てきます。①まずは選んだトークを字幕あり・字幕なしで数回見てから、トランスクリプトを用意してください。知らない単語や表現を調べて意味がわかるようにします。②次にトークを聞きながら最初はトランスクリプトや字幕なしで、後について繰り返してみます。英語が聞こえて来たら影のように後から追いかけて口に出すシャドーイングという方法ですと、ビデオを止めずに先に進めます。最初はうまくいかなくて当然ですので、ついていけなくて最後までやってみましょう。③コツがわかったらトランスクリプトを見ながらシャドーイングしてみてください。こちらはだいぶ楽ですが音声を追い越してはいけませんよ!あくまで影のように真似してください。④仕上げにまたトランスクリプトなしでシャドーイングを行います。
最終的には、字幕なしでもう一度トークを見て、言っていることが8割方わかれば、もうそのトークは卒業です。どうでしたか?必ずしもこの手順通りでなくてもいいのですが、まずは英語をよく聞き、それからわからないところをチェックするのが基本です。
好きなトークは暗記するまで聞き倒すのがいいですね。そうすれば自分で英語スピーチをするのも遠い目標ではなくなります。
今年一年、皆さまにとって実り多い年でありますように。