こちらの写真は先月29日に行われた「インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル2018」、通称「ICAF2018」の懇親会会場での1コマですが、写っているのは今年の3月にアニメーション学科を卒業し、新人アニメーターとしてシンエイ動画株式会社に勤務している佐藤いよさんです。
今回の「ICAF2018」で上映された東京工芸大学のプログラムの中には、佐藤さんの卒業制作作品「ナクシモノはこっち」も入っていたのですが、ご覧になれなかった方はこちらで見て頂くことも出来ますので、是非どうぞ!
とても丁寧に作られた、主人公のワンちゃんがなんとも可愛いアニメーションです。
ところで佐藤さんが手にしているのは現在発売中の「小学8年生」秋号ですが、こちらの特集記事の中に「新人アニメーター佐藤さんの一日に密着!」というページがあり、それ以外のページにも、更には表紙にも、彼女の写真があちこちに掲載されています。
なんでも今、小学生のなりたい職業の上位にランクされているのが「ユーチューバー」と「アニメーター」なのだそうですが、今号の「小学8年生」は付録に「アニメの仕組み体感セット」として「くるくるムービーマシン」に加えて、小さいながらもLED照明でちゃんと使える「写し絵ライトテーブル」まで付いて、なんと980円というビックリのお値段!今ならまだ書店で買えると思いますから、是非お薦めですよ。因みにこちらはその「小学8年生」を紹介する、小学館キッズのサイトです。
また、佐藤さんの一日密着記事をご覧頂けば、新人アニメーターとして働く佐藤さんの職場環境は大変快適で、アニメーターとして働くということがイコール必ずブラックな環境に身を置かなくてはならないなどということは決してない、それは大きな誤解だということもお分かり頂けると思います。
という訳で、10月12日(金)の「領域研究」のゲスト講師には、まだ卒業したてでプロなりたてホヤホヤの佐藤いよさんに来て頂き、後輩たちに向けて語ってもらいました。この授業は3年生のための、就職に向けた意識喚起のための授業ですが、学生にとっては同じアニメーション学科の先輩、それも卒業したのが最近の先輩ほどその話が身近に感じられるものです。いよさんにとってもまだ記憶に新しい、就職のための準備やそのスケジュールなど、大変具体的に語ってもらいました。
佐藤いよさんというと在学中から独特の語り口で、いつも非常に個性的な「いよ節」で話すのですが、その「語り」が適度なユーモアも交えつつ実に上手いのです。この日の「領域研究」でも随所で笑いが起こり、寝ている学生は殆ど見当たりませんでした。
ところで当然ながらこの授業は平日に行われている訳ですが、佐藤さんが勤務するシンエイ動画株式会社は、佐藤さんが母校の授業にゲスト講師として出てほしいと言われていると話したところ、この日一日を佐藤さんに休日として下さり、その上に是非母校の学生さん達に伝えてあげてほしいとのメッセージまで下さったのだそうです。
佐藤さんは、シンエイ動画に入って最初の研修期間を僅か2ヶ月で通過したそうですが、その間にどのような研修を受けたのかという内容も、大変興味深いお話でした。それは、実はアニメーション学科の2年生が「動画」の授業で取り組んでいる内容と、驚くほど寸分違わず同じだったからです。
もちろんプロの研修で求められる結果は、レベルが格段に違っています。しかし基本として押さえておかなくてはいけないことは、どこへ行っても同じだと分かります。将来プロになりたいと志す学生たちは、授業で取り組んでいるのは全て基礎の基礎として必ず役に立つことを理解して、しっかり取り組んでほしいと思いました。
佐藤さんは自分のだけでなく、同期の卒業生たちからも就活に使ったポートフォリオを借りて来て、具体的にどのくらいのボリュームでどういう内容のものを載せれば良いかを丁寧に説明してくれましたが、学生たちには恐らくそこに載せられた絵のレベルこそが強い刺激になった事でしょう。佐藤さんは「自分は学年の中では中の下だった」などと謙遜していましたが、そんな彼女が自分はとても敵わないと思うような周囲の絵の上手い学生を横目に見ながら、自分の画力を上達させるためにどのような努力をしたか、それによって大学生活の4年という期間で、どれほど描く絵が変わったかということまで、全て包み隠さず見せてくれました。それは、少しでも上達したいと思ったら決して大学の授業課題をこなすだけでなく、その上に更に地道な努力を積み重ねる必要があるということを、非常によく示していました。
最後に、シンエイ動画から学生たちに伝えてほしいというメッセージの内容です。「他人の絵や写真をモデルにデッサンするのではなく、必ず実物を目の前にしながら描くように心がけて下さい」とのことでした。絵の上達には、目の前に存在している実物を、しっかり見つめる「眼」を鍛えることが何よりも大切。
とても大事なメッセージを、どうもありがとうございました。