5月6日の「領域研究」のゲスト講師は、フランス人のピエール・ジネルさん。ピエールさんは画家ポール・セザンヌと同じ、フランスの有名な観光地でもあるエクス・アン・プロヴァンス出身ですが、「UFOロボ グレンダイザー」が大好きで、小松原一男さんと荒木伸吾さんの大ファンだったことからフランスの日系配給会社で「紅の豚」の配給担当となり、その後来日して永井豪さんの「ダイナミック企画」に勤務しました。現在はフランスのみならずヨーロッパ各国に向けて日本のアニメーションを紹介する仕事をしていて、アニメーションを通じた日本とヨーロッパの架け橋となって活躍されています。このゴールデン・ウィーク中も翻訳のお仕事で大変お忙しくされていたところを、今回の特別授業のために工芸大に駆けつけて下さいました。
今回の授業では、ヨーロッパで日本のアニメやマンガがどのようにして受け入れられ、そして人気になっていったか、現在に至るまでの流れを中心にお話し下さいました。最初に見せて下さったのが、通常のテレビ放送でオンエアされたという「リボンの騎士」のオープニング。テロップは全て横文字で、先日亡くなられた富田勲さん作曲のあの有名な主題歌は歌が無くメロディーだけでした。
やがて様々な制約の多い通常のテレビ放送から別の媒体で視聴されるようになっていき、音声は日本語のままで字幕が付いて、それでなお多くのファンが視聴するようになっていったと言います。ピエールさんが関わった「紅の豚」のフランス語版も見せて頂きましたが、主人公ポルコの声はあの名優ジャン・レノ!(渋い!)全編フランス語になると、「紅の豚」がすっかりフランス映画の香りに包まれるのが不思議です。
貴重な映像を沢山見せて頂きましたが、最後に流れたのはフランスで行われたコンサートで、影山ヒロノブさんが「ドラゴンボールZ」のオープニングテーマ「CHA-LA HEAD-CHA-LA」を熱唱するシーン。会場は大盛り上がりですが、お客さんは全てフランス人とイタリア人だそうです。さびの部分は全員が合唱しているのですが、もちろん皆さん日本語で歌っていて、ちょっと不思議な光景でした。
ピエールさんは日本のマンガを翻訳してヨーロッパに紹介するお仕事もされており、今回はその中の何冊かも持って来て下さいました。ヨーロッパ圏では文字は左から右へ読みますから、本は全て基本的に左綴じになります。日本のマンガは殆ど右綴じで、右から左に読んでいきますが、当初ヨーロッパでは、そのような日本のマンガを子供に読ませたら皆頭が狂っておかしくなってしまうなどと警告する人もいたそうで、実際初期には全て絵を左右反転させて左から右へ読み進むようにしていたそうです。しかし心臓が右になってしまうなど、矛盾が多く出てきて、今では日本のスタイルをそのままに、右綴じで出版されるのが当たり前になりました。(もちろん、それで子供の頭がおかしくなるような現象は出なかったそうです。)日本にしか無い表現で、静かな時に「シーン」と書かれていたりすると翻訳のしようが無いなど、ピエールさんは興味深い苦労話も聞かせてくださいました。
最後には大サービスで、ヨーロッパでしか販売されていない「NARUTO -ナルト-」のボードゲームのパッケージを、その場で封を切って開けて見せて下さいました。日本で発売されていないのがとても残念な、面白そうなゲームでした。
ピエールさん、お忙しい中沢山貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。