マンガ学科

【授業風景】「マンガ基礎演習Ⅳ」ゲスト講師授業紹

2013年1月8日の二年生「マンガ基礎演習Ⅳ」伊藤剛准教授の授業で、マンガ家の西島大介先生とライターのさやわか先生をゲスト講師としてお迎えしました。

西島先生とさやわか先生はコンビを組み「ひらめき☆マンガ学校」という、たいへんユニークな試みをされており、今回のゲスト講義は「ひらめき☆マンガ学校」の出張版という形になっています。2010年12月以来、二度目の「出張版」です。授業は終始笑いに包まれ、とてもたのしく充実したものとなりました。

<写真1:自己紹介をする西島大介先生>

<写真2:解説中のさやわか先生(左)と西島先生(右)>

「ひらめき☆マンガ学校」は、西島先生のマンガ家生活での経験をバックボーンに、講談社BOXの企画として展開されました。「マンガを描くのではない。そこにある「何か」をそっと「マンガ」と呼んであげればいい」というテーマのもとに、「何か」が「マンガ」になるためのさまざまな実験を繰り返してきた、とても常識破りな企画です。

こと「ひらめき」の第二学期では、「『マンガ家とは単なる肩書き』『自分をデビューさせてくれる人と知り合おう』など破天荒すぎる理論で16人の生徒をマンガ家に仕立て上げる」(単行本『西島大介のひらめき☆マンガ学校 マンガ家にはなれない。かけがえのない誰かだけが、君をマンガ家にする。』西島大介×さやわか、講談社、2012 帯より)という一見すると無責任な、悪ふざけにすら見えるようなコンセプトで展開されていました。

<写真3:これが「ひらめき☆」の極意か!?>

ところが、そうした悪ふざけ、あるいは「マンガを学校で教えること」自体のパロディのような体裁の「ひらめき☆マンガ学校」ですが、その内実はといえば、マンガという表現そのものに対して批評的な西島先生の作風ともしっかり呼応して、マンガ表現についてたいへん分析的なものとなっています。たとえば、コマの形と大きさ、配置がマンガの内容まで規定してしまうといったことを実感させる作業があります。

このゲスト講義でも、過去の「ひらめき☆マンガ学校」の講義のダイジェストの後に、実際に三通りのコマわりを印刷した紙を用意し、与えられた30分という限られた時間で、ともかく1ページの「マンガ」を描くという課題が出されました。

<写真4:真剣な表情でコマわり課題用紙を選ぶ学生たち>

これは、枠どられた領域=コマで紙面をどう分割するか、という要素と、コマとコマが隣り合って並べられることによって「物語」が動き始めるという要素の拮抗で、「マンガ」という表現が成立しているという、現在のマンガ研究でなされている考え方(たとえば、ティエリ・グルンステン『マンガのシステム』)ともよく合致するものです。

また、伊藤准教授が常日頃「マンガ基礎演習Ⅲ(前期)」と「基礎演習Ⅳ(後期)」で行っている授業もまた、コマわりがいかに「物語」を形作っているのかについての論理的な考察を用いて、学生に1~4ページ程度の「ネーム」を描かせるというもので、「ひらめき☆マンガ学校」とは方法論的に重なる部分があったわけです。

ではあるのですが、伊藤准教授の普段の授業は、それこそあらかじめ方法論化された方向に添って、与えられた形式を踏ませることで逆に学生個々の個性や感性を発揮させようというものです。そのため、ともすれば、学生のうちに授業で学んだ方法論からはみ出しづらくなる態度が生まれることが危惧されていました。

<写真5:学生の作品を講評する西島・さやわか両先生>

そこで、伊藤准教授から「これまで一年かけてカッチリ教え込んできたものを、西島先生たちの破天荒さでブッ壊してほしい」という注文が出されていたのです。

<写真6: 30分以内で描く! という課題に筆ペン一発描きでチャレンジ。この学生さんの作品はちょっと突出していましたね。>

「ひらめき☆マンガ学校」では、西島先生が「15分で描いた」マンガ、「3分で描いた」マンガ、というページも紹介されます。必ずしも緻密に描きこむことだけがマンガではないということです。また西島先生は、マンガ雑誌の新人賞などを経ず、「SFマガジン」という文芸誌でいきなり連載デビューをしています。このように「正攻法」だけではない、ある意味で「チート」と言われることもある「方法」を鮮やかに示すものであります。これらの「極意」は、西島・さやわか両先生の、ときにきわどい「話芸」で伝えられていました。

そして、なんと今回は「ひらめき☆マンガ学校」の生徒で、現在「コミック・リュウ」などで活躍中のマンガ家・ふみふみこ先生も参加してくださいました。うれしいサプライズ・ゲストでした。ありがとうございます。

授業を終えてのコメントをお二人にいただいています!

西島大介先生コメント:

生徒のみなさんとのやり取りの中で、ジャンル「プリン」ジャンル「屋上」などの新発見があり、刺激的な楽しい講義となりました。サプライズ要員として匿名参加していたふみふみこさんを、それと知らずコマ運びからピックアップした伊藤先生、さすがです!

さやわか先生コメント:

学生の皆さんは普段「漫画を描く」技術を学んでいると思うので、今回は「漫画家になる」という、似てるけどちょっと違う視点からの講義をやらせていただきました。しかし皆さん、課題では優れた作品ばかり描いてくださって、さすがでした。常識を取り払って、さらに自分の漫画力を伸ばしていただければと思います!

西島先生、さやわか先生、ありがとうございました。

【ゲスト講師プロフィル】

西島大介:マンガ家。『凹村戦争』(早川書房)でデビュー。主な作品に『世界の終わりの魔法使い』シリーズ(河出書房新社)『ディエンビエンフー』(小学館)、『I Care Because You Do』(講談社)など。ポスト311ラブコメ『Young,Alive,in Love』をJUMP改(集英社)で連載中。

さやわか:ライター、編集者。「ユリイカ」(青土社)、「Quick Japan」(太田出版)などに寄稿。初の単著『僕たちのゲーム史』(星海社新書)が好評発売中。

【マンガ学科】卒業制作展の風景

【卒業生の活躍】松浪甲兵(PN)さんの作品が雑誌掲載されました

大学公式サイトはコチラから
KOUGEI PEOPLE 東京工芸大学 学科・コースブログ集

最近の投稿

アーカイブ

大学公式Webサイトで
工学部・芸術学部の詳細を見る

PAGE TOP