芸術学部 基礎教育

リレー連載・今月の一枚 3

今年度のリレー連載は、基礎教育の教員が目を引いたり、皆さんに紹介したい光景などをもとに文章を綴っていきます。今月は石井麻璃絵先生にご寄稿いただきました。


基礎教育(英語)を担当する石井です。本日は、「外国文学」の授業でも扱っている『ハリー・ポッター』に描かれる「ホグワーツ特急」について考えてみたいと思います。

2025年はシリーズのなかでも人気の高い『ハリー・ポッターと炎のゴブレット(映画)』の公開20周年ということもあり、現在、豊島園のスタジオツアーでは特別企画が催されています(2025年9月8日まで)。参加者がツアー全体のちょうど中盤ほどで辿りつくのが、「9と3/4番線」のプラットフォーム、そして「ホグワーツ特急」のセットです。

ホグワーツ特急はロンドンに実際にあるキングス・クロス駅と、『ハリー・ポッター』の主な舞台となるホグワーツ魔法魔術学校の最寄り駅であるホグズミード駅を結ぶ汽車です。学校に向かう魔法使いや魔女たちは、9番と10番ホームのあいだの柵に向かってまっすぐ歩くと、9と3/4番線にたどり着くことができます。9と3/4番線のプラットフォームは、ハリーが本格的な冒険に出かけるための一種の「ゲート(門)」的な場所と言えるでしょう。大きな荷物を持ってキングス・クロスの駅にたどり着いたハリーは、それまで知らなかった様々なことを教えてくれていたハグリッドと別れ、一人で9と3/4番線に向かうことになります。ハリーはマグルの駅員に行き方を聞きますが、冗談を言っていると思われ相手にされません。途方に暮れていると、運よくウィーズリー家の人たちがプラットフォームに向かおうとしているのを見かけ、彼らに声をかけて無事にプラットフォームに着くことができます。階段下の小さな物置部屋で暮らしていた少年が、大きな世界に旅立つ瞬間です。

空飛ぶ箒や馬車、車が存在する魔法の世界ですが、どうしてハリーたち魔法使いの子供たちは汽車で学校に向かうのでしょうか。かつて、ホグワーツに通う生徒たちは箒や移動キー、あるいは魔法生物に乗って通学していました。しかし、こうした移動手段は子供たちの安全を確保するには不十分であり、また、移動中にマグルに目撃されることもしばしばありました。そのため、1827年に魔法大臣オッタリン・ギャンボルは、当時発明された蒸気機関車を生徒たちの通学手段として導入することを決めました。建設にはマグルの技術者が採用され、蒸気機関車が完成すると技術者は記憶修正呪文をかけられてマグル社会に返されました。1850年代にはキングス・クロス駅とホグズミード駅が完成し、ホグワーツ特急は本格的な運航を始めます。『ハリー・ポッター』のなかで、魔法使いたちは基本的にマグルの技術や製品に対して無関心、無知、もしくは嫌悪に近い感情をもっていますが、マグルの技術がホグワーツの生徒たちの重要な交通手段として利用されているのは興味深いことです。

ホグワーツ特急のコンパートメントでハリーはロンと再会し、二人は到着までの時間を一緒に過ごすことになります。その後、ヒキガエルを探しに来たネビル、ネビルの手助けをするハーマイオニー、そしてダイアゴン横丁で見かけていたマルフォイとその取り巻きの2人組が、コンパートメントを訪れます。このように、ホグワーツ特急はハリーが新しい世界に旅立つための交通手段となると同時に、主要なキャラクターたちとはじめて出会う場となります。

4月から東京工芸大学に入学した新入生のみなさんは、6月になりそろそろ大学生活に慣れてきたころでしょうか。上級生の人たちも、課題や授業で忙しく過ごしていることでしょう。どうぞみなさんも様々な出会いや経験を通して、充実した学生生活を送ってください。

リレー連載・今月の一枚 2

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