毎年この時期に行う「シネカリ」の実習です。
手渡されたフィルムの表面をカリカリと削って絵を描いて、動画にしていく。
アニメーション表現基礎の「表現基礎」はアニメーションには(みんなが普段見ているアニメとはまた別に)様々な技法や制作手段があるんだよということを伝える入門の授業です。物心ついた時にはすでにデジタルだったであろう1年生にとって、 一体何がどうなるのかよく分からない中で、まずはやってみることが求められます。
やってやれないことはないけれども、普段描いているような細かい絵を描くというよりも、感覚の赴くままに抽象的に描いてもいいんです。こんな細いフィルムの面積では、前のコマとのつながりがどうといった話は、ここではあまり気にしなくていいかも。
この授業は毎年A、B組合同で行います。1本のフィルムを長く伸ばして、それを囲んでみんなで細い針で削っていくのはなかなか見られない光景。
そして出来上がったA組、B組のフィルムを繋ぎ合わせて最後に映写します。こういった映写機は、もしかするともう彼らの親世代でも見たことがないかも?
出来上がったものを静止画にしたのがこちらです。部分的に絵をピックアップして一枚にしたので、実際とは少し異なりますが、雰囲気は伝わるのではないかと思います。この課題を行っていた教室名は「マクラレン」という名前が付けられています。ノーマン・マクラレンはカナダを拠点に活躍した、アニメーション監督の中でも特に著名な人物の一人です。所謂セルアニメなどとはまた異なる、実験的でユニークな作品を数多く手がけています。今回行った「シネカリ」はマクラレンが初めて行った技法ではないですが、そういった技法の作品制作も含めて、後世のアニメーション作家に今でも影響を与え続けている人物です。
どうしても「アニメを勉強したい!」と考えると、テレビで放送されている番組をイメージしてしまいがちですが(もちろんそれでも良いです!)、世の中は広く、アニメーションの表現には多様性があるということを知ってもらいたいです。大学で学ぶからには、少しでもこれまで知らなかった物事に触れて、発想を豊かにしてもらえればと思います。