化学・材料的『KOUGEIカラーサイエンス&アート』 vol.1

東京工芸大学は、文部科学省の平成 28 年度「私立大学ブランディング事業」において、『「色」で明日を創る・未来を学ぶ・世界を繋ぐ KOUGEI カラーサイエンス&アート』というテーマで選定されています。これに関連して、東京工芸大学では、毎年、教員から「色」をテーマとした研究課題を募集し、助成を行っています。令和元年度は、化学・材料コースから3件の研究課題が採択されました。

そこで、この場を借りて、今回採択された研究テーマや、既に終了した過去のテーマについて、順番に紹介します。

まず、第1回目は、私、松本の研究を紹介します。研究テーマ名は「黒鉛層間化合物の色標本の作製-色の分析とその活用-」です。

黒鉛層間化合物は、黒鉛の層間にアルカリ金属原子などを挟み込んだサンドイッチ状(≒ミルフィーユ状)の化合物です。黒鉛(英語では Graphite:グラファイト)は、グラフェン(Graphene;正しくはグラフィ~ン)と呼ばれる炭素原子が網目状に連なったシートを幾重にも重ねた層状の化合物です。なので、その層間はゆるく、いろいろな物質を取り込むことができます。そしてできたサンドイッチ化合物(ミルフィーユ化合物)を黒鉛層間化合物(Graphite Intercalation Compund: GIC ジー・アイ・シー)といいます。

黒鉛自体も電気を通すのですが、黒鉛層間化合物になるともっとよく通すようになります。それは、黒鉛層間に挟まった物質と隣接するグラフェン面との間で電子の受け渡しが生じるからです。例えば、カリウム原子(K)が挟まると、カリウム原子は電子を1個取り外してカリウムイオン(K+)となり、その電子をグラフェン面に渡します。すると、グラフェン面上の電子の数が増え、電気が流れやすくなります。電気の流れやすさは電気伝導率で表されるのですが、黒鉛が層間化合物になると、この値がだいたい10倍になります。そして、それと同時に、『色』の変化も生じます。

上の写真がそれです。右の黒色(灰色)のものが黒鉛、左の黄金色のものは、右の黒鉛にカリウムが挟まった層間化合物です。これは黄金色ですが、カリウムの量が少ないと、青色(メタリックブルー)になります。実は、黒鉛層間化合物はスマートフォンやノートパソコンのバッテリーとして利用されているリチウムイオン電池に応用されています。その時は、カリウムでなく、リチウム(Li)ですが。リチウムの層間化合物も青や金色になるのですが、カリウムの場合よりもやや赤味の少ない金色になります。

このように、黒鉛層間化合物にとって『色』はとても重要な特徴なのです。カリウムやリチウムなどの挟まれる”具”の違い、また、黒鉛の形状や品質によって発色は異なります。しかし、その辺のことがまとめられた資料がないのです。教科書にもカラー写真は載っていません。単に「金色」とか「青色」という文字表現だけなので、わかりにくく、不都合を感じることが多々あります。たとえば、ある層間化合物を”暗い青緑色”と表現したら、「違う! 〇〇先生の論文には”緑色”と書いてある!」と指摘されたことがあります。実物かカラー写真がない限り、この溝は埋まりません。

黒鉛は、今後も、より広く使われていく材料の1つです。そして、その黒鉛の電気伝導性を改善したければ、層間化合物をつくるのが1番早いのです。なので、黒鉛層間化合物は、今後も研究され続けていきます。なので、ここで私が、いろいろな黒鉛層間化合物を合成し、その『色』を資料として後世に残したいと思います。そう、写真集を作ります。

上の写真はスマートフォンで撮ってみたのですが、ボケています。層間化合物はガラス管の中に真空で封入されているので、素人には撮影が難しいです。そこで、写真に詳しい先生方の力を借りて、東京工芸大学(旧・写真大学)の名にかけて、美しく、役立つ、写真を撮ります。(もちろん、もう少し科学的な見地からもいろいろ検討します。。。)

松本研のホームページはこちら。

さらに、近々、公開講座もあります!

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2019年日本液晶学会 液晶討論会にて大学院生5人がポスター発表

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